第26話 冒険者になってみた!

 ユニカいわく、全世界の冒険者の中で1番になるなんて簡単なことらしい。


 でも、もし一番になれればユニカの親父さんに会ってもそう簡単に殺されることはないのだという(なんで会うだけなのに殺されそうになることが前提なんだ!)。


 今のところユニカの親父さんと会う気なんてさらさらなかったが、もしも偶然どこかでバッタリ会って殺されるのは嫌すぎるので、俺はその話をユニカから聞いた時、冒険者になっておくのもありかもなと密かに思っていたのだった。



 というわけで、俺たちはターナヤ王国(俺はこの国の山の中で目覚めたわけだ)の王都、ターナヤーナにある冒険者 世界組合ワールドユニオンに来ていた。

 もちろん冒険者登録をするために、だ。


「ユニカは登録しないのか?」


 と俺が訊くと、


「ユニカが登録したら、即、全世界で1番の冒険者になっちゃいますから登録はしません。でも、師匠の冒険者パーティーのサポートメンバーにはなってあげますから安心してください! ちなみにサポートメンバーは登録不要なんです!」


 とユニカは自信満々に答えた。


 やっぱりユニカは相当強いんだな、パーティーのサポートメンバーっていうのはバンドのサポメンみたいなもんだろうか、などと思いながら俺は冒険者登録用紙に自分の名前を記入しようとするのだが、


「あっ! 名前どうしようか?」


「まだ思い出せないんですか? 師匠!」


「・・・・・・うん、全然思い出せない。でも、なんか名前ひとつじゃなかったような気がするんだよな」


「えっ! それは通り名ではないですか!」


「通り名?」


「疾風の○○とか超速の○○とかそういうカッコいいやつです!」


「・・・・・・カッコいいか、それ?」


「とにかく名前がないんじゃ登録できないですからねぇ。どうしましょうか? 師匠! この際、なんでもいいから決めちゃったらどうですか?」


「なんでもいいって・・・・・・じゃあ、師匠でいいかなぁ? なんか名前っぽくないか? それともショウがいいかな?」


「ショウがいいです! 師匠を師匠と呼べるのは未来の花嫁のユニカだけですから! ショウと書いてください! 師匠!」


「ああ、はい、はい。ここに書けばいいのか?」


「そうです! そこに師匠じゃなくてショウと書いてください!」


 どういうわけだか俺は異世界文字が書けるようになっていて(というか日本語を書くとそれがどんどん異世界文字に変換されていくのだ)、さらにどういうわけかそれをそれほど不思議だとも思わなくなっていた。


 だから俺は自分の新たな名前(とか性別とか)を書きながら自然とこんなことをユニカと話していた。


「いや、でも冒険者っていうのは一体何をするんだ? 俺はRPGぐらいでしか冒険者について学んでこなかったんだが・・・・・・」


「師匠! アールピージーってなんですか?」


「RPGっていうのはモンスターを冒険者が倒しまくって世界を救うすごい面白いゲームのことだ」


「ユニカ、RPGやりたいです!」


「じゃあ、今度、宿に泊まった時に二人でテーブル・トークRPGをしような! ・・・・・・でも、ほんとはあと3人くらいいた方が楽しいんだけど」


「ユニカ、師匠と二人っきりなら何をやっても楽しいです!」


 満面の笑み(くそかわいい!)を浮かべてユニカが言う。


 俺はもうちょっとで、ユニカに何か重大なことを告白しそうになってしまう(もちろんグッと堪えたが)。


「でも、そのためには宿に泊まるお金が必要ですね、師匠!」


 そういえば最後にユニカはそんなことを言っていたっけ。





 冒険者登録を終えて外に出ると、なにやら街の広場が騒がしい。


 ユニカと共に人混みの中に入っていくと、広場の中央で何かイベントが開催されているみたいだった。


『王都ターナヤーナ公認 最強の冒険者決定戦!! 優勝者にはコヤーナ王から賞金50万カーネンと最重要ミッションの依頼が!』


 というのぼりや横断幕が辺りには張られている。


「師匠! 腕試しに出てみます?」


「腕試し?」


「そうです! 腕試し! ・・・・・・でも、炎のブレスは使っちゃだめですよ!」


「なんでだ?」


「相手があのかわいそうなお家みたいなことになっちゃうからです! これはこの街のお祭りのようなもののようですから、そんなことしたらめちゃくちゃ引かれちゃいますよ!」


 引かれるどころか逮捕だろうな。


「じゃあ、どうやって戦うんだ? 武器もないのに」


「大丈夫です! 右手のその指輪がまった第2の指だけで勝てますよ! なんたって師匠のその指はマスタードラゴンの指なんですから! マスタードラゴンの力で相手の攻撃はみんなその指に自然と集中しますから楽勝です!」


「・・・・・・本当か?」


「本当です! ユニカを信じてください! さっさと優勝してユニカとの結婚資金の50万カーネンもらってきてください!」


 後半の物言いがちょっと納得できなかったが、俺はユニカに勧められるままその街の冒険者の大会に参加することにしたのだった。



※※※

第26話も最後までお読みくださりありがとうございます!


もし少しでもおもしろいと思っていただけたら、作品フォローや★評価してもらえるとすごくうれしいです!


【次回予告】

第27話 初戦の相手は熱いやつ!?


いよいよ俺の初戦!

対戦相手は熱いやつ!?

ついに俺本領発揮?の第27話っ!


どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m




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