第5話 伍長順位戦!(ヘッケルト教授の㊙️講義その②)

 属性判定式の翌日、俺は第182番 伍長ごちょうから第142番伍長に昇格した。


 の才能が認められた、というわけではなく何故かごっそりとその間の伍長たちがみんな軍を辞めて田舎に帰ってしまったのである。ある者は実家の家業を継ぐために辞め、ある者は自分の才能に限界を感じて辞め、ある者は都会の生活が合わなくて辞め、そしてまたある者は女性関係の問題を起こして辞めていったらしい。


「なんかちょっと不気味だな。こんなに大量に一度に辞めていくだなんて」


 とヘッケルト教授の2回目の講義の直前に、ヤーバス・ロダノ第139番伍長がヒソヒソ声で俺に言ってくる。


 確かにちょっと不気味だ。

 なぜならそんなことは今まで一度もなかったのだから。

 というか、軍を辞めるやつなんて一年に2、3人くらいしかいないはずなのだ。

 たった一日で彼らは何でそんな重大な決断をしてしまったんだろうか? 

 しかも何十人も同時に!


 そんなことを思っていると、ヤーバス・ロダノ第139番伍長がさらに俺にこう言ってきた。


「でも、ルーフェンス! お前はジュナ・ヘッケルトと付き合ってる最中に唯一出世した男なんじゃないか?」


 その時、俺は思わずこんなことを言ってしまったのだ。


「付き合ってるのかな? 俺はまだそういうつもりじゃないけど・・・・・・」


 すると、大講義室のどこかから、


「ヒドイっ!」


 という女の声が聞こえてきたのである。


 とにかく俺はゾッとした。


 だが、その声は俺の耳にしか届かなかったみたいで、


「ん? どうした、ルーフェンス? 顔色が悪いぞ?」


 と、ヤーバス・ロダノ第139番伍長が心配そうに俺の顔を見ながら言ってくる。


 空耳だったんだろうか?


 そう思っていると、大講義室にヘッケルト教授が入ってきたので、俺はそのことを考えるのを一旦中断した。




「みなさん。突然ですが、次の講義から伍長順位戦を行いたいと思います。トーナメント方式で一対一で魔術でもって戦って、最後まで勝ち残った人は魔術特級教授のわたしの権限で軍曹ぐんそうを飛び越えて一気に曹長そうちょうに昇格させます!」


 ヘッケルト教授がそう宣言すると、一人の伍長がすっと手を上げた。


「ええっと・・・・・・確か君は・・・・・・」


「ロキヤン・ガタラ第1番伍長です」


「ロキヤンくん、なんでしょうか?」


 と、ヘッケルト教授に優しい声音で尋ねられると、サラサラの深緑色の髪が特徴的な男前だが同性からしてみると少々鼻につく顔をしたロキヤン・ガタラ第1番伍長はその場で立ち上がり、俺たち伍長全員を代表するような口調でこう言った。


「僕たちは属性判定式を終えたばかりで、まだ魔術を教授から教わっていません。それなのにどうやって戦えと言うんですか?」


 ああ、こういう生徒、前世の高校にもいたよな。


 でも、確かに伍長順位最上位者の彼には少々納得いかないイベントなのかもしれない(それでも軍曹を飛び越えて曹長になれるのは誰にとっても大きな魅力である)。


 俺はそんなことを考えながらその会話の成り行きを見守っていた。


「今から講義形式で魔術の基本を教えますからきっと大丈夫ですよ」


「講義形式? 実際に魔術を見せてはいただけないのですか?」


「わたしは魔術に一番大切なのは独創性だと考えています。よその国では君の言うように指導者が魔術を実際に見せたり、手取り足取り教えたりするみたいですが、それでは平凡な有りものの魔術しか習得できません。今日、魔術の基本はちゃんと教えますから、あとは各自が独創的な自分だけの魔術を来週の順位戦までに生み出してきてください。・・・・・・なあに、人間切羽詰まれば何か出てくるものですよ」


 第1番伍長、ロキヤン・ガタラはまだ不満そうな顔をしていたが、それ以上歯向かっても自分にとってのマイナスになるだけだとようやく悟ったらしくその場に大人しく着席した。


 すると、それからすぐにヘッケルト教授は魔術の基本を俺たち伍長に熱心に話し始めた。



※※※

第5話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!(応援コメントやレビューコメントもお待ちしております!)


【次回予告】

第6話 図書館での大人の甘い出会い❤️


 図書館を再び訪れた俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)に新たな出会い(災難?)が!? な第6話っ!


 どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m



 

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