第4話 図書館での男女の語らい💗

「ルーフェンス! まさかお前がだったとはなぁ。よし! 同じ火属性のよしみで図書館に付いていってやるよ」


 長いながいヘッケルト教授の最初の講義が終わると、ヤーバス・ロダノ第139番伍長が俺にそう言ってくれた。


 まったくなんていいやつなんだろう!


「本当か? ・・・・・・実は、ここの図書館まだ行ったことないんだよ」


 と俺が告白すると、ヤーバス・ロダノ第139番伍長はニッと白い歯を見せてからこう言った。


「俺もだよ!」



 そもそも前世では俺は読書好きで知られていたのだ。

 しかし、こっちに来てからは小説というものを一冊も読んでいなかった。

 もちろんいろいろと落ち着いたらこっちの小説も読んでみたいなぁとは思っていたのだが、向こうで死んでしまって転生してからこの日まで落ち着かない日々がずっと続いていたのだ。


 正直なところ自分が死んでしまった実感は全然なくて、つい最近まで、死なないと転生しないのだということにすら気づいていないくらいだったのだが、せっかくこうやって転生できたのだからもう二度と早死はしたくないとは思っていた。


 だからその時俺は、「今度こそこの世界で自分に与えられた天命をまっとうしたい!」と強く思いながら最高の友と、魔術軍の外観のとてつもなく立派な図書館の中に入っていったのである(中の装飾もすごかった!)。


 しかし、すぐに俺は少し遠くの窓辺でひとり本を読んでいるジュナ・ヘッケルトを見つけてしまったのだ。


「げっ」


 と俺は思わず声を上げていた。


「・・・・・・ははは、じゃあ、ルーフェンス、俺はここで失礼するな! これはある意味、関係を断ち切る絶好のチャンスだ! 頑張るんだぞ! ファイトッ!」


 そう言って俺の最高の友は早々にいなくなってしまった。


 なので、俺は覚悟を決めて、日の光を浴びて先ほどよりもさらに美しく輝いている燃えるような赤いウェービーヘアを一方の耳にかけて本を読んでいるジュナ・ヘッケルトの方へとゆっくり歩みを進めていった。




「・・・・・・あれ? もしかして、ジュナ・ヘッケルトさんじゃないですか?」


 そう声を掛けられて、少しは気まずい表情になるかと思った(だって確かに帰ると言っていたんだから!)のだが、ジュナ・ヘッケルトは混じり気のない100%の満面の笑みで俺を迎えてくれた。


 けれど、すぐにその表情を真剣なものに変えて俺に向かってこう言ったのだ。


「遅いじゃないですか! ずっと待っていたんですよ! 忘れられたのかと思ってもう少しで命を絶ってしまうところでしたよ!」


「えっ?」


 と俺が驚きの声を上げると、ジュナ・ヘッケルトは、「冗談ですよ」とニッコリ微笑んだ(これがなんとも美しくて恐ろしかった!)後で、続けてこう言ったのである。


「でも、本当にあまりに待たされすぎたんで、もう少しで貴方あなたのことを思ってすごくイヤらしいことをしていまうところでした!」

 

 俺は思わず、ジュナ・ヘッケルトの薄紫のコルセットドレスからはみ出た驚くほど大きくて柔らかそうな胸をほんの一瞬だけチラリと見てしまった。


 すると、ジュナ・ヘッケルトはすぐに俺の視線に気づいて、その大きすぎる胸を両手で隠すような仕草をしてからこう言ってきたのだ。


「ごめんなさい! 胸が大きすぎて合う服がなかなかなくて・・・・・・。本当はあなた以外の誰にも見せたくはないんですけど。・・・・・・気になりますか? ・・・・・・今、他に誰もいないし、ちょっと触ってみます?」


 それを聞いて、何だか頭が急にクラクラしてきたので、


「あっ! すいません! ちょっと今すぐしないといけない用事を思い出したので、これで失礼しますね」


 と早口で言うと、相手の返事も待たずに俺は情けなくもその図書館から逃亡したのだった。



※※※

第4話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ルーフェンス・マークス第182番伍長)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!(応援コメントやレビューコメントもお待ちしております!)


【次回予告】

第5話 伍長順位戦(ヘッケルト教授の㊙️講義その②)!


伍長順位戦ってなんですか?

早くも出世の予感漂う第5話っ!


どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る