ノケモノ黒魔術師のやり直し。2週目人生をLv999の闇の力で、最凶魔王と呼ばれて無双する。勇者に裏切られ、命と愛する者を奪われた俺、過去に戻ってすべてを取り戻します!
43話。魔王軍に聖王都の人々を救助させる。
43話。魔王軍に聖王都の人々を救助させる。
(サーシャ、民たち──特に女子供を聖王都の外に一人でも多く避難させてくれ)
俺はサーシャに念話を通して、指示を出した。
(カイ様!? すみません。人間たちが全員苦しみ出しているのですが、ど、どういった状況なのでしょうか?)
(勇者の身体を乗っ取った教皇クレメンスが、人々の生命エネルギーを吸収している。放置していれば、たぶんここは死の都になる。頼む、魔王軍の力を結集して、みんなを救うんだ!)
(……わかりました。勇者と戦っておられるのですね。そして、私たちの行動が、勇者の悪しき意図を挫き、カイ様を支援することに繋がると!)
サーシャは多くを語らずとも理解してくれたようだ。さすがはグリゼルダの右腕として、長年仕えたことだけはある。
(必ず勇者を倒して、グリゼルダと一緒に帰る。頼んだぞサーシャ!)
(はい! ご武運を!)
グリゼルダに視線を落すと、土気色だった顔に血色が戻ってきてきた。
「グリゼルダ、【光耐性Lv5】は俺が、ヤツに勝つために必要なスキルだ。気に病むことはない。回復に専念していてくれ」
「わ、わかったのじゃ。すぐに戦えるまでに回復して、カイ様に助太刀するのじゃ」
グリゼルダは俺の教えた【ダーク・ヒール】を自らにかける。
これでもう、グリゼルダは大丈夫だろう。
「……魔王軍の動きが。まさか、民たちを都市外に避難させようとしているのか?」
教皇クレメンスは驚きの表情で、聖王都を見下ろす。
ワイバーンやグリフォンなどの飛行型の魔獣が、苦しむ人々を背に載せて、せっせと都市外に運び出していた。
獣人やゴブリンが女子供を背負って、城壁の外を目指して走っている。
ひとりでも多くの人を救おうと、みんなが力を合わせてくれていた。
「そうだ。お前のスキル【生贄の制限】の効果範囲は、この聖王都内だけじゃないか?」
俺は魔剣ティルフィングを構える。
どんなスキルにも射程距離や効果範囲が存在する。教皇クレメンスの話から、俺は聖王都が【生贄の聖剣】の効果範囲だと当たりをつけた。
「その通りだが。くくくっ、どうやら余は、貴様を買い被っていたようだ。余の力を弱めるのが目的であれば、聖王都に放火し、民を皆殺しにすれば良いものを。まさか、本気で聖王国との和平を実現させる気なのか?」
「……ほ、本当であるか、カイ殿? 民たちを救ってくださると?」
もはや虫の息の聖王が呼びかけてきた。
「もちろんです。俺は約束を必ず守ります」
「……あ、ありがたい。どうか、勝ってくれ。我らが真の英雄よ……」
それだけ告げると聖王は動かなくなった。
無論、負けるつもりは微塵もない。
「ふんッ。魔王を真の英雄などとは、笑止千万。このような愚かなる聖王家の血筋など、完全に絶えさねばならんな」
「できるものなら、やってみろ」
その瞬間、教皇クレメンスが踏み込んで斬撃を放ってきた。
俺は魔剣で弾くが、骨が軋むような衝撃が走る。
「この肉体はレベル800まで上昇している。どうだ、手も足も出まい!」
「くぅっ!」
どうやら勇者のユニークスキル【自動回復・極】で、魔法薬【レベル・ブースター】の副作用は完璧に抑えらているようだ。
相手の自滅は期待できない。
「カイ様ぁ!」
グリゼルダが痛みを堪えながらも【黒雷(くろいかずち)】を放つ。だが、教皇クレメンスが展開した光の障壁に弾かれてしまう。
「ふっ、こんな小娘の助力を頼みにしているのだとすれば、ガッカリであるぞ、魔王? しょせん、ゴミはゴミであったな」
教皇クレメンスは嵩に懸かって攻めてきた。
光の聖剣と打ち合う魔剣に、亀裂が入る。闇属性は光属性に弱い。
もし俺が【光耐性Lv5】を修得していなかったら、最初の一撃で、魔剣は圧し折れていたかも知れない。
「幕引きだ!」
俺がバランスを崩したのを見て、教皇クレメンスは、大きく聖剣を振りかぶる。
「【毒沼(ポイズン・レイク)】!」
その瞬間を狙って、俺は教皇クレメンスの足元を毒の沼地に変えた。
新たに修得したスキル【高速詠唱】のおかげで、地形操作魔法を一瞬で発動できたのだ。
俺を侮っていた教皇クレメンスとってこれは、完全に予想外だったようだ。
「ぬぅッ!?」
ヤツは足を取られて転倒しそうになるのを堪える。
そこに、さらにグリゼルダから【黒雷(くろいかずち)】が飛んだ。
「わらわは魔王カイ様の右腕、いついかなる時も、カイ様をお守りするのじゃ!」
「おのれ!」
「【瞬間移動】!」
俺は教皇クレメンスの頭上に瞬間移動しつつ、魔剣を振り下ろした。
その一撃は、教皇クレメンスの展開した光の魔法障壁を砕いて、ヤツの肩を斬り裂いた。
「がっ!? バカなぁ!?」
「やった! さすがはカイ様なのじゃ!」
グリゼルダが歓声を上げた。
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