13日目(土曜日 仮)薪ストーブの部屋の夜「予想と期待」

 



 13日目、私が決めた土曜日の夜になった。


 今夜の夕食は、めしにした。炒飯も好きでよく作るのだが、今夜は、焼き飯を久しぶりに食べたくなった。

 米と一緒に炒める食材は、チャーシューではない豚バラ肉、玉ねぎ、にんじん、ピーマン、そして、そこに、かまぼこやちくわを入れても美味しい。

 例の通り、あらかじめカットされている肉や野菜を冷や飯と一緒にフライパンで炒めて、中華だしやオイスターソースではなく、塩とコショウで味を調える。出来上がった焼き飯を皿に盛って最後に、中濃ソースを適当に掛けて出来上がりだ。みじん切りではない大きさのカット野菜が炒飯ではなく、焼き飯にぴったりのような気がする。また、塩、コショウと中濃ソースの味付けでは、これを炒飯とは呼んではいけないだろうと思う。

 この焼き飯が何故か懐かしい感じがするのだが、これも、例の通り、その理由が分からない。しかし、おそらく、これは、おふくろの味なのではないかと勝手に予想している。

 ただ、どんなに、おふくろの味、と思っても、母の面影は微塵も浮かんでこない。



 夕食を食べ終えた私は、長いソファに寝ころんで、薪ストーブの火を見つめながら明日のことを考えていた。


 今夜の夕飯を食べ終えても、食材や牛乳、オレンジジュースといった飲み物のストックはまだ若干あった。しかし、今日まで、冷蔵庫の補充はされていなかったし、いよいよ、明日、私が決めた日曜日に、あの黒い服の男がやって来て冷蔵庫の中身を補充してくれるだろう、と考えていた。


 前回と同じように、午後、私が白い部屋から帰ってくるタイミングなのか、それとも、私が、この薪ストーブの部屋に居る時間に訪れるのか、それは、分からない。

 いずれにしても、私は、あの黒い服の男にいろいろと尋ねてみたいと思っている。


 果たして、彼が、私の問いに答えてくれるかどうか…

 あの感じだと、私が何を言っても、前回と同じように、完全に無視をされるかもしれない。

 でも、何かを尋ねて、答えてくれそうなのは、水曜日に清掃に来た二人の女性ではなくて、黒い服の男のような気がするのだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る