10日目(水曜日 仮)薪ストーブの部屋の午後「別の訪問者」 

 



 10日目、私が決めた水曜日に、黒い服の男とは違う訪問者が来た。しかも、二人も、だ。

 この前の日曜日の黒い服の男と同じで、白い部屋から帰った来たタイミングだった。

 訪問者は、初老の女性と若い女性の二人で、二人とも部屋の掃除をしていた。


 私と同じ年齢くらいの初老の女性は、ビリヤード台が置いてある空間で掃除機を掛けていた。コンセントに線をつながないハンディタイプの掃除機だった。20代に見える若い女性の方は、薪ストーブのある部屋の床をなんとかワイパーで拭いていた。

 二人とも、上下水色の作業着を着ていて、つば付きの白い帽子をかぶっていた。

 海が見える窓付近に、大きなごみ袋が二つ置いてあった。私が、この10日間、出した生活ゴミだった。


「掃除していただいて、ありがとうございます」


 私は、各々別な場所で作業している二人の女性に聞こえる声でお礼を言ったが、二人の女性ともそれに返答することなく、黙々と作業を続けた。


 二人が見える窓側に所在なく立っていた私が、若い女性に向かって「その床を拭く道具、置いていってくれたら私も掃除できますので…」と言った。


 しかし、若い女性は私の方をチラッと見たものの、私の言葉には応答しないまま清掃作業を続け、床の拭き取りが終わると、清掃用具と窓側に置いてあったごみ袋を持って、初老の女性と共に黒いドアを開けてこの部屋から出て行った。


 二人があの黒い服の男が取った対応とほぼ同じだったことに、少なからず落胆したが、これで、この部屋に来た訪問者が3人になったことと、今後も定期的に清掃に来てくれそうなことが予想されたのが少し嬉しく感じた。





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