【最終回】イタズラの果てに…

 透明になって梓にイタズラしてから、彼女は俺から離れようとしない。

目を離すと透明になった俺にイタズラされるから、監視したいよな。


監視してくる梓は可愛いが、ちょっとうっとうしくもある…。



 そんな俺達も、夕飯以降は一緒に行動することはない。今まで梓のおばさんとは何度も会って話したことがあるが、おじさんとは数回顔を合わせたことしかない。


遅くまで梓の家にいると、仕事帰りのおじさんとバッタリ遭遇する可能性がある。

それは気まずいから避けたいのだ。


梓も俺の両親との面識は同じなので、遅くまで俺の家にいたがらない。

今までは、そうしていたんだが…。



 夕飯を済ませた俺。風呂まで時間があるから、梓の家に侵入しようかな。

あの家はおじさんが帰宅するまで、玄関の鍵を閉めないことを知っている。


なので透明になった後、物音を立てずに玄関から堂々と入ればOKだ。

俺はその方法で、梓の家に入る…。



 梓の家には、何度も来たことがある。構造や部屋割りはバッチリだぜ。

俺は彼女の部屋の前に行き、扉をちょっと開ける。


…ベッドの上でうつ伏せになりながら、スマホをいじっているな。

今なら侵入できそうだ。バレないように…。


無事、侵入成功。学校の時とは違い梓はまったく警戒していない。

さて、どういうイタズラをしようか…。



 梓は体勢を仰向けに変え、携帯を枕そばに置く。

その後、右手で下の敏感なところをいじり、左手で自分の胸を揉み始める。


これってもしや…。観察を続ける俺。


「ん♡」

彼女は喘ぎ声を漏らし始めた。


あの手の動かし方、手慣れている。


このまま見守るのもアリだが…。やっぱ無理、我慢できないな。

俺は梓の上に覆いかぶさり、キスをする。


「ん~!!」

彼女は体をジタバタさせ、パニクった様子を見せる。


当然だろう。梓からしたら、急に唇を謎のものに塞がれたんだから…。


キスを中断させ逃げようとした俺だが、梓の足が運悪く股間に当たった。


「いって~!」

つい声を出してしまった。男なら避けられない道だ…。


「その声、海斗?」


…これ以上はごまかせないな。俺は透明化を解除する。



 「いくらなんでも、勝手に私の部屋に入って襲うのはひどい。やりすぎ!」


「…すまない」

調子に乗り過ぎたな…。


「海斗がこんな人とは思わなかった。…私達、別れない?」

梓のあの顔、マジで言ってるな。


「そんな!? それだけは勘弁してくれ!」

ワガママを言っているのは百も承知。だが俺は、梓以外の女子には興味ないんだ。


別れることになったら、俺は…。


「だったら、って誓って!」


「え…」

まだまだ透明になって、やりたいことはたくさんあるのに…。


「誓えないなら、今すぐ別れてもらうから!」


「わかった! 2度とならないから!」

これはふざけすぎた罰なんだろう。罰は償わないとな。


「…もうそろそろ、お父さんが帰ってくる時間だからさ」


遠回しに『帰れ』と言ってるな。


「わかった。また明日な」

俺はそのままの状態で、梓の部屋を出た。



 次の日。梓はいつも通りに見えた。良かった、元に戻ってくれて。

だからといって、透明になるのは止めよう。


俺はもう、梓の怒ったり悲しむ顔は見たくないからな…。

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