第55話 クローディアの憂鬱

 夏期休暇が終わってしまった。


 その間の鍛錬の成果は?

 騎士科のクローディアは、課題報告レポートじゃなくて、試合で成果を示す事になってる。


 でも…。

「それまで」


 運が悪いとしか言いようが無い。

 私は初戦、騎士科特Aクラスのウィルバルトに当たってしまった。


 瞬殺。

 何も出来なかった。

 クラス分け分のハンデがあったにも関わらず。


 Fクラスの私は最低ランク。

 だからこそ、先生から防御力敏捷性腕力UPの魔法支援を貰い、ウィルバルトには敢えて防御力ダウンの魔法をかける形になっていたけど。


 後日聞いた。

 騎士科TOPのジオを負かす為に、そして首席のミルキィにも打ち勝つ為に、彼はこの休暇中他流試合にも近い鍛錬に、王都近くのランクD迷宮ダンジョン1人ソロで潜る荒業を行なったらしい。

 補習に追われた私とは密度の違う毎日を過ごしていたんだ。


「補習が有ったとは言え、何の鍛錬をしたんだ?クローディア=レストレード」


 騎士科の教師グレッグから鍛錬課題カリキュラムが出された。


 これを毎日やれ、と…。


 ウィルバルトは決勝以外、ほぼ瞬殺で勝ち上がり、決勝相手のジオのみが拮抗した死闘とも呼べそうな試合展開で。

 そして、彼は念願のTOPの座についた。


「次は、俺が勝つ」

「悪いけど、卒業まで渡さないよ」


 他クラスや騎士科の女子からも歓声が上がっている。

 あれは?ミルキィ?

 それにクラリスも?

 そうか。ジオの応援?クラリスはジオの主家令嬢だってし。2人の元へジオが。

「お疲れー!残念だったねー‼︎ジオ」

「貴方は頑張ったわ、ジオ」

「ありがとう、ミルキィ、クラリス」


「コッチには何も無しかい?」

 そこへウィルバルトも。


「騎士科TOP、おめでとー!ウィルバルト。そろそろ私も越されるかなー?」

「何言ってやがる。聞いたぜ、またランクSの従魔が増えたって。それに、ソロぼっちでゼダン湿地帯、彷徨いたらしいな」

「それ、言ったの、ジオ?」

「まぁ、聞かれりゃ応えるよな」


 本当に楽しそう。

 何が違うの?私は何処でこうなったの?


 どうせ最下層クラス。

 楽しい筈が無い。


 そうぼやきつつ、クラスに戻ってみると。


「じゃあ、効能1.2倍、作れる様になったんだ」

「何とかコンスタントにね。数熟せって言うの、実感湧くわ」


 Fクラス錬金術科ドリスと商業科ソフィア?


「なら、今度の演習、それを元手にさせて貰える?」

「おっと。じゃあ数作らないとね。ミルキィみたいにはいかないからね。あんま期待しないでよ」

「するわ。こないだの1.2倍分のポーション、夏期休暇前の赤字解消に結構充てる事出来たんだから。課題報告レポート作成、マジ助かっちゃった」


 このクラスでも楽しそう?


 どうして?どうして?どうして⁉︎


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「アレが騎士科のミス・レストレードね。ふふふ、成る程。ライガス様の言う通り、随分暗示に掛かっている事。これなら…。うふふ」

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ミルキィにおまかせ! ノデミチ @ndmt

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