第54話 新学期、それぞれの目標は

 夏期休暇終わったー。

 慌ただしい休暇だったよー。


「それ、ミルキィだけだと思う」


 何で皆頷くのー?

 しれっと従魔アンタ達も同意してないでよー。酷いよ、もう。

 今、タラちゃんは庭木の上の木陰に。

 キラちゃんは中庭の池の主と化してる。


 中央の置石と築山が連なる場所。

 とっても日当たりがいいんだって。

 そこで手脚伸び切ってだらけ切ってる駄亀魔物キラちゃん。アレでもランクS。


 まぁでも、課題っていうかバイトっていうか。

 色々稼がせてもらいました、この夏期休暇。


「それもミルキィだけだと思う」


 もう起業出来る位の製薬錬成してるし。

 改良した錬成陣も幾つか認可されたし。


 寮の部屋の棚の奥。巾着に入ってるのは先日両替した金貨なんだよー。コツコツ貯めてた銅貨じゃメチャクチャ嵩張るし。

 プリシアの薦めで両替商へ行ったんだー。

 山の様に堆く積んだ銅貨を恨めしげに数えてたけどねー、両替商のオネーサン。


「そう言えばクラリスは、夏期課題、どうしたの?」

「騎士団の協力もらってね。鍛錬と怪我の関連や、より怪我を少なくする身体作りとかね。その辺りの研究報告レポート×5を出してる」


 錬金術科もだけど、神聖科や商業科等戦闘メインではない科目は報告レポートが主。


 じゃあ戦闘メインの騎士科とか魔導師科は?

 実は新学期初日に、どれだけの鍛錬をしたか、結果が問われる実技考査って言うか、ズバリ試合がある訳で。


「じゃ、ジオの応援に行きますかー!」


 騎士科へ出向いた私達。

 まさに決勝!って時でねー。


 ジオvsウィルバルトは想像通りだよねー。


「そろそろ、その座を明け渡して貰おうかな」

「悪いけど、卒業まで渡さねえよ」


 うん、火花バチバチ!

 もう騎士団顔負けの剣技の応酬の上、死闘を制したのはウィルバルト。


「くっそ!やっぱ魔法の差か」

「火力も身体能力も上げられるんだ。やっと会得出来た。君のお陰だよ」


 職レベルで言えば『魔法戦士』より『戦士』の方が遥かに上がり易い。多分2レベル位ジオが上の筈。だから素の身体能力ステータスじゃジオの方が高いと思うけど、魔法でその差を埋めた…って言うか逆転してると思う。かなり身体的に無理してるだろうし反動もキツい筈。


 それでもウィルバルトは、ジオに勝つ為に魔法を使ったんだ。


「次は俺が勝つ」

「悪いけど、卒業まで渡さねえよ」


 同じセリフを返してニヤリ。

 おお!カッコイイじゃん、ウィルバルト。

 私達、特Aクラス女子は勿論、他のクラスや同じ騎士科の女子達からも歓声が飛んでる。


 戻ってきた2人に。

「お疲れ、残念だったねー、ジオ」

「貴方は頑張った。惜しかったわ、ジオ」

「ありがとう、ミルキィ、クラリス」

 でも、この魔法の差は、多分今後広がっていく。

 ウィルバルトも、昇華スキルアップを目指してるのかと思う程の厳しい鍛錬を課してるみたいだし。

 それはジオも分かってるんだ。

「もう少し、首席トリオの座を維持出来ると思ったんだけどな」


 うん、頑張って、ジオ。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「これからどうするのですか?魔将ライガス様」

「人間は成長する。実に面白い。前大戦で無関心決め込んでいた事を後悔しそうですよ。で、大魔王様は何と?」

「件の錬金術師を、何がなんでも倒せ、と」

「それは御免被りましょう。それに魔将グレゴールの方が、其の任、やりたがっています」

「ライガス様?」

「この間、あの件を進めましょうかね。ですが」

「分かっております。私が彼女に張り付きましょう。このユーリガにお任せを」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「ライガスがコッチに言ってきた。オメエら!例の錬金術師をブチ殺しにいくぞ」


 奴には別の思惑がありそうだが。

 まぁいい。それに乗ってやろう。

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