第52話 この国に生まれて良かった

 搦め手はさすが。

 でも、黙ってたら肯定したって思われても…。


「旧い知り合いがいたわ。前回あなたに言った。ソーンの仇も取らせてもらうって」


 錬金術科の同期がミルキィを見てる。


「成る程。魔女ソーンの知り合いでしたね、そう言えば。確かに、あの魔女に知らぬ事は無かった。私の名も得意技も。ならばこそ大魔王様も彼女を討伐なされた訳ですが」

「ほっといてもいい位の無関心派。魔法理論の研究バカ。ソーンを討つ必要なんかなかった筈」

「私も言いましたよ。魔女に知らぬ事はない、と。此方の全てを知る相手を野放しに等出来様筈もありますまい」


 大鎌を持つ手が震える。

 前世含めても、こんなに頭に来る事なんかないよー。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 学院生。

 人間共の言う同期クラスメイトですか。

 彼女達の間に不協和音を奏でさせればと思ったのですがね。つい同意してしまいました。


 普通なら魔法の連射で、人間共を庇うレベッカは身動き取れなくなる筈なのですがね。本当に解析消去マテリアルキャンセルは厄介です。その上彼女は悪魔の鏡デモンズミラーの異名をもっていましたね。数撃っても全てを威力増しで返されたのでは割に合いません。


 何より、力押し等愚劣な策を採るなど魔将の名に相応しく有りません。


 次の一手は…。


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 急に襲われて怖かった。

 こんなの初めてで。


 ミルキィがあっという間に倒していく。


 これが学年首席の、ううん、学院TOPと呼ばれるミルキィの戦闘力?魔族をも討ち倒すって。


 その魔族が現れた。

 は?ミルキィに「魔界へ帰れ」って?

 ミルキィが魔族だとでも言うの?


 魔人族とは思えない戦闘力?

 魔物が懐いてるから?

 魔族の言ってる事が、尤もらしく聞こえて来る。


 魔女ソーン?

 そう言えば、ミルキィのお父さんの旧い知り合いの魔族がいるって言ってた。その魔族を訪ねて魔界へ単独行したって。


 魔界の全てを知っている?

 魔族の事も?


 そんな凄い魔族と知り合い?

 え?知り合いの魔族、もう殺されてるの?


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 魔女ソーンの物知りを認めた?

 一応誤魔化せたの?


 でも、多分、皆の心に疑惑の種として残る。

 いつか、ゆっくり種は芽吹き育って…。


 私は、いつまで人間と一緒に過ごせるんだろー。


「では、どうあっても魔界には帰らない、と」


「当たり前よ!ミルキィはこの国、ううん、この学院にいるんだから‼︎」


 ドリス⁉︎


「そうね。この学院の、とっても強くてとってもダサい田舎者の、とっても頼りになる同級生クラスメイトなの」


 はい?とってもダサい⁇って、エリー?


「お料理、とっても美味しいの。ミルキィの手作り、皆喜んで食べてるの。それがどういう事か、魔族のアンタなんかには分かんないでしょうね」


 ライザも…。


 皆んな…。


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 お料理?手作り?


 疑惑の種は打ち込んだ筈。何の芽吹きもなかったのか?レベッカを無条件に信じていると言うのか?

 人族は、他種族を排す傾向があった筈だ。


 これが、この国の風土。

 勇者アレクの創りし王国ならでは、か。


 全く、何故よりにもよってレクサンダルに転生したのだ。

 女神サンディアめ。本当にいらぬ事を!


 こうなると、いや、まだやりようはあるか。

 全ての人族が、このようになる訳では無いからな。


「我等はいつでもお帰りをお待ちしています」


 クックックッ、フ、フハハハハハ。

 出直すとしましょう。


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 魔族が去った。

「ミルキィ!」


 でも彼女は俯いたまま?

「ね、私、そんなにダサい?」


 は?そこ?それ、気にしてるの?ミルキィ。


「まぁ、同じの着てるし」

「特Aクラスの人からも、そう聞いてるし」

「今日の、ソレ、服は動き易いカジュアルなのに何故草履?」

「まだソックス履いての作業靴なら、も少しマシだと思うけど」


 コーデが、何かおかしいのよ、ミルキィ。


「だって、夏にソックス履くなんて」


 そう言えば制服姿でも素足に靴履いてたよね、この子。


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 は?ソックス?

 夏でも、皆、履くの?靴なの⁉︎


 でも、ありがとう。

 疑惑の種はある筈。それを「ダサい」で吹き飛ばしてくれたんだー。


 この国。レクサンダルの風土。

 私を育ててくれた国。あの村だけじゃない。


 クラリスのトコも、学院も。


 この国に生まれて良かった。

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