第41話 従魔が増えた

 レクサンダル王国とヴァイラシアン王国との国境近く。ゼダン湿地帯。


 文字通り、広大な沼地なの。

 騎馬での移動はとても無理な地形だから、国境線にも関わらず防壁も監視砦もない平原にも見える場所。

 魔法が有るとは言え、やっぱ主戦力は騎士団だから、騎馬機動力の使えない此処は戦場になり得ないんだとー。


 隣国ヴァイラシアンとは、全く小競り合いが無いとは言わないけど、「敵は魔族」って認識位は一致してるって聞いた。

 その辺もあって、この辺りには特に防御拠点は無くて、強いて言えば国境の街ザーラが、その役割を担ってる。でも詰所程度しか無いし、更に言えば、この街はヴァイラシアンとの交易で栄えてるトコ。


 国境守備軍のケイン辺境伯近衛師団は、決して脳筋でも戦闘狂でも無い訳でー。

 聞いた話。

 ヤザン騎士団長ジオのお父さんスキル算術銭勘定だって。

 商人顔負けの取引するって評判。

 『魔法戦士』なのにねー。

 息子のジオもスキル裁縫縫い物だし。下手するとドレスだって仕立てられる腕なんだよー。


 スキルって不思議。


 私自身、スキル解析消去マテリアルキャンセルだし。コレ、戦闘ではとっても有り難いけど、錬金術では全く必要がないの。


 女神より与えられし職と生まれ付きのスキル。勿論、ピッタリ合う人もいる。

 クラリスは『聖女』でスキルは癒しの波動。彼女の側にいると僅かだけど自然に回復していくし、毒等の状態悪化への抵抗力が上がるの。

 セレンディアも『賢者』でスキルは世界の知識。本人曰く「知らんモノはないーっ」らしい。まぁ、雑学だけでなく全ての魔法理論もだけど。セレンディア、お茶目だよねー。


 話、それたねー。


 その沼地で、私は今、素材集めに勤しんでる。

 内緒ソロで。


 底無や泥濘深いトコもあり、私の様なちっこいのが彷徨くのは、ホントなら自殺行為。腰までレベルじゃなく、多分首出るかなーって位。足つかないトコも有りそーだよ。


 しかーし!私には翅が…、もとい従魔タラちゃんがいる。


 ブブブブブン。


 大鎌持って空中に屯する童女。

 どんな絵面だよ。

 側からみたら間抜けっぽいけど、やってる方は大真面目。ってか落ちたら死活問題だよねー。


 パチャ。

「はーぁ!」

 沼地の上でズバッと魔物を倒していく。で水面に落ちる前に腕環アイテムボックスへ収納。兎も角収納。後で選別。


 シュシュシュー!

「そだね。ゴハンにしよー」

 美食家グルメ従魔タラちゃんからの食事催促エサくれに応じる事にする。


 ブブブブブン。


 湿地帯から離れるべく、私達は数少ない岩場へと進む。と、その時!


 ゲゲゲッコ、ゲッコ、ゲッゲッ!

 ギィイイイアー‼︎


 2種類の魔物が戦ってる?

 それも1vs多数。


 どっかで見たデジャヴだなー。


 多数なのはカエル種魔物、ヒュージトード。ヌメヌメした毒分泌皮膚の、人間をも一飲みにする程のデカいカエル。

 1体なのはカメ種魔物、アダマンタートル。

 鉱石アダマンタイトの名がついていても別に岩石身体という訳じゃない。それに匹敵する程の甲羅の硬さと頑丈さを持つ、盾や鎧の素材としては一級品の魔物。でもランクSだよねー、アレ。

 亀のクセに火属性も持ってて火を吐く事が出来る、とんでもない魔物。


 毒が可燃性?

 ヌメヌメと濡れている筈のヒュージトードが次々と焼かれている。ヒュージトードにとって皮膚が濡れてるのは生存にも直結する事態だから。火を浴びて乾燥したら毒分泌は勿論、呼吸も危うくなる事がわかってる。

 その意味では、火焔放射が出来るアダマンタートルは天敵とも言えるわ。


 そのアダマンタートルは、カエル共を根こそぎ焼き尽くすとコチラを睨みつけてきた。


 既視感どっかで見たーを感じつつ、ちょい傷つき弱ってきているアダマンタートル。


「ね、アナタも回復させたらついて来る?」

 腕環アイテムボックスを煌めかせポーションを取り出すと、私達は慎重に亀へ近付いていった。

『何故助けようとしてる』

 従魔タラちゃんん時と一緒だ。

 コイツもランクSだからか?何となく知性を感じるんだよねー。

薬製作者錬金術師としてはね。弱ってる相手には回復薬ポーション分けてあげたい訳」

『物好きめ』

 そう言ってる、と思い込んでるだけ。

 でもアダマンタートルから敵意が消えた。


 パシャパシャ。

 ペロン、ゴク。


 かけられたポーションを1舐めする亀。


 カチリ。

 やっぱり。


 絆が結ばれた感じ。2回目だよー!

 私はアダマンタートルを従魔契約テイムした事になってしまった。


「よし、水辺もあってキラキラしてるし黄色だし。『キラ』ちゃんに決定!」


 後でクラリス達から「名付けセンス酷くね?」って言われた。


 ほっとけー!

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