第42話 コンビネーション

 沼地から離れ、今度はゼダン岩礁に来ている。

 此処は、湿地帯とは状況が違ってあまりにも岩がゴロゴロしていてやっぱり騎馬隊が走行するには面倒くさいって言うか、熟練者じゃないと石コロに車輪をとられたり乗り上げてバランス崩したりと上手く走行出来ない場所。

 しかも岩草ロックグラスが結構茂ってるからゴロゴロ岩が視認しづらい。乗り上げ横転の難所なのよねー。


 それはさておき。

 魔物に囲まれちゃったよー、私達。


 茶化す様に言ってるのには訳がある。

 囲んでるのがウサギ種魔物ホーンラビット。


 …ランクF。


 いくら数が多いっていってもねー。

 ランクS魔物が2種類いるし、私自身魔将とガチでやり合える冒険者。

 10数匹のウサギ位瞬殺出来るよー。


 ここまでランク差があれば普通は向かって来ないんだけど、数で気が大きくなってんのか?

「あーらら。ね、ぱぱってやっちゃって」

 私は大鎌すらしまったまま。

 ホバリング始めたデスタラテクトタラちゃんと2足歩行でたちあがったアダマンタートルキラちゃん

 ほぼ瞬間移動に近い形でタラちゃんが糸で拘束していく。時たま突っ込んでくるホーンラビットがいるけど…。


 ゴン!


 亀ってあんなに跳ねたり出来るの?

 キラちゃんがあっちこっち飛び廻り突進して来るホーンラビットを跳ね返してる。


 あ、今度は大跳躍?

 しかも口から火を噴いて。


 あはは。

 まるで自動追尾


 守備もだけど攻撃においても、私達はいろんなコンビネーション技を楽しみ…もとい確かめたんだー。

 その意味じゃ、ホーンラビットって理想的なお試し魔物だよねー。って言ったら、一部冒険者の反感買いそー!


 ヤバヤバ。


 そんなこんなで素材集め。

 ある程度集まったので昼食TIME!


 タラちゃんのは自作餌ペレットが有るけどキラちゃんは?何となく確認しつつ作ってみる。


 魔物って、大きく2種類に分けられる。


 元から魔物として産まれてくるモノ。

 野生動物が魔力を貯め込み、体内に魔核コアを生成して魔物に変化するモノ。


 前者はドラゴンとかね。その辺で見かけない奴。

 つまり、殆どが動物からの変化。

 アダマンタートルも石亀って野生動物が年月を経て魔力を貯め込み魔物化してる。


 で、元々の動物時の食好が、魔物に成ったからって変わらないものもいてね。アダマンタートルも水草、エビ、昆虫、魚と、魔物らしからぬ雑食性を持ってるんだー。

 猫種なんか、動物時は雑食なのに魔物化すると肉食になるから、亀種の食生活変化無しっての割と珍しい部類だと思う。

 お陰で自作餌ペレット作り易い。


「どぉ?」


 与えたペレットを美味そうに齧ってるからコレでいいみたい。よかった。


 私もパンにハムやタマゴを挟み込んだ軽食と特製手作り水筒に入れたミルクでお昼。


 腹ごしらえ済んだ処で、そろそろ帰途につきつつ、もう少しコンビネーション技を試してみよーかな?


 亀種キラちゃんが従魔になった事で、攻撃力もだけど、私達の守備力は大幅に上がったの。


 は、いいけど、肩に蜘蛛魔物、両手で亀魔物抱える童女って世間一般では変かもしんない。


 …このまま帰って大丈夫かなー?


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 ミルキィの姿が見えない。

 素材集めって言ってた気もするけど。


 誰か、騎士団の人か、ついて行ったのかしら?


 心配になったクラリスは近衛師団詰所に聞いてみた。

「おや、お嬢様、どうされましたか?」

「ミルキィは来ていませんか?」

「さぁ、今日は姿を見ておりませんが。おぉーいい、誰かミルキィお嬢様を見かけたかぁー?」


 誰もいない?

 誰も見かけていない⁉︎


 ミルキィ!また1人で?


「どうした…、どうされましたか?お嬢様」

 ジオに敬語で接されると少し悲しい。

 でも、学院の時みたいに話されると、ジオは団長お父君から折檻されるとかで。


「ミルキィが、ひょっとして、また1人で出たみたいなの」

「あー…」

 声には出せないから、暗にって言うか、目で「大丈夫だよ、彼奴なら」って。

 そう思うけど。

 実際、此処の近衛騎士すら彼女に勝てなかったし。


 それでも、彼女ミルキィの小さく可憐な姿を見ると万が一を考えてしまう。


 そんな心配をよそに、ミルキィは愉しげに帰って来た。


 …ね、その、脚元の亀は何?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る