第34話 魔将強襲!①

「例の魔人族はまだガキだ。人間共の言う学院とやらにいるとか」

「ついでに、今、その学院には『聖女』や『剣聖』の王族もいるとの事。好機だ」

「ハン。我等が出向く程の事か?」

「ではお主はいらぬよ。我に任せて貰おう」

「いいだろう。やってみるがいい、ダーム。我は大魔王様に報告へ戻る。ミノゾスは引き続き監視と工作を行え」

「ハン、面倒な事だ。人間共の監視など必要とは思えぬ。我等が一気に攻めれば事は直ぐに片付く」

「その驕りで前大戦は『勇者』に敗れたのだぞ。人間を侮るな。これは大魔王様の命令だ」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 野外演習も3日目。

 リアンナ殿下の突破力って凄いよー。

 それにつられて?ジオの剣戟も威力上がってると思う。魔法使いや回復防御支援の僧侶・聖女との連携も、かなりスムーズになってきてるし。


 簡易野営キャンプ地で休息。

 細工師フィリップとの合同製作。会心の出来と言える魔導コンロ。

 ちょっとした魔力で起動し、ケトルで簡単にお湯を沸かせる魔導具。

「お茶、淹れたよー!」


 一斉には休息出来ない。

 交代交代だけど、それでも一息つける時間が出来た私達は、お茶と各種ポーションで気力体力魔力の回復をはかるのー。


「コレだよ。もう、他のお茶が飲めなくなってきてるよ、ミルキィ」

「美味いもんなぁ。それに何か身体中に沁み渡るし」


 そりゃまぁ。錬金術師が普通の水、使う訳ないでしょー?魔力水を純水加工して、薬効成分入りのお茶を煮出してるんだから。

 回復もだけど、地道に1~2の魔力の底上げも出来る優れ物なんだよー。


 前衛の奮闘のお陰で私は結構楽してる。

 だから、お茶やお料理で支援するの。後、各種回復薬ポーション錬成も随時で。


 キャンプ中は、クラリスの防御結界が張られてるから、生半可な魔物は入って来れない。だから気が緩んでたとは言えないと思う。


 でも、その日。

 クラリスの結界を破れる程の魔物が現れたんだ。


 グッギャアアアアー!


「うわぁ、な、何だ?コイツは?」

岩石竜ロックドラゴン!こんなのが王都の近くに出る筈ないのに‼︎」


 大地属性のランクA竜種。

 鉱石にも近い身体は、かなりの業物の武器じゃないと刃が立たない。かと言って魔法も、竜種ならではの耐性レジスト能力が備わってる。だから、リアンナ殿下の『王者の剣』か、私の『刈取の大鎌』位しか傷付けられない相手。


「皆、下がって!」

「リアンナ殿下!私も‼︎」


 岩石竜ロックドラゴンは、その身体の特質上鈍重過ぎると言ってもいい。翼も無いし。なのに、どうしてコイツの接近に気付けなかったの?


 グッギャアアアアー!


 岩石息吹ロック・ブレス

 人の頭程の岩石礫を吐き出してくる。当たったら致命傷だよ。


 シュシュシュシュー!

 家位の大きさに拡がった網糸がブレスを包み込む。サンキュー、タラちゃん。


 ガキーン!

「か、硬い」

 流石『王者の剣』。刃毀れしてないね。でもあまりダメージになってないのは剣技もだけどリアンナ殿下が非力なんだ。


 しかーし!

 私の魔力を通した大鎌は、ミスリルだって断つ事できるんだからー‼︎


「はぁーアッ!」


 会心一閃。

 ゴトッ。頸を断ち斬られて、竜の頭が落ちる。

 ズズーン。で、横倒しに倒れる竜。


 シュシュシュー!

 強酸性の毒液を吐くタラちゃん。前脚の間から腹部にかけて掛けられたソレは、竜の岩石身体を溶かしていく。

 そこへ鎌の刃を撃ち込む!

 刃を通して私の魔力が流れ込み、竜の魔核コアが爆ける感触が伝わってきた。


 ガラ、ガラガラ…。

 石塊と成り崩れ落ちる岩石竜ロックドラゴン


「凄え…、ミルキィ、ランクAの竜を」

「あんな苦もなく斃せるのかよ」



「ガキだと思っていたが。ククク。やはり魔人族は根絶やしにせねばならぬ存在だな」


 私達を見下ろす中空に立つ魔族。


 まさか?魔将ダーム?

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