第35話 魔将強襲!②

「…魔将ダーム⁉︎」

「ほう?我を知っているか?魔人族よ」


 中空にいるのは、大きな2対の角が無ければ高貴な麗人に見える男性。白い長髪に笑みを浮かべた長身の優男。でも彼は、魔族の中でも好戦的で「人族を根絶やしにすべき」と声高々に宣言する程の人間嫌いで有名だった。笑み浮かべてるのに、その紅眼が全然笑ってないよー。


 好戦的過ぎて大魔王ベルドの命令にも逆らう時がある様な…。

 そんな奴が、どうして?

 彼をも、新たな大魔王は配下としたの?


「人族憎しの暴虐魔将。そういう評判位はね」

「光栄だな、魔人族よ。ならば我に殺されようとも不服はあるまい」

「冗談!」

 従魔タラちゃんが背に飛び移って、透明な翅を拡げる。大鎌を構え直し、ミルキィはダームの正面へと飛翔した。


「ミルキィ!」

「クラリス!全ての魔力を聖属性結界にして‼︎ ソリアとセレンディアも防御魔法シールドを目一杯の魔力で!」

「ほう?1人で我に立ち向かうと?それ程死にたいか!魔人族よ‼︎」

「やれるモンならねー!」

 皆が見てるけど、言ってらんない。

 大魔王の娘レベッカ本来の能力を使う。


 悪魔の鏡デモンズミラーと何故呼ばれるのかをねー。


 簡易野営キャンプ地に防御魔法シールドが張られた。更にクラリスの結界も。


 よし!これで私達の戦闘の飛火も何とか耐えられるでしょー。


 それじゃあ、心置きなくやってやるー!


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「先生!」

「ミルキィ君に何か考えがあるのでしょう」


 結界の中、クラリス達は上空を見上げる。ミルキィと魔族…魔将と呼ばれていた存在を。


 でも…。

 聖属性結界と防御魔法の重ね掛けされたシールドは白く輝き出して、外の風景を隠しつつある。お陰でミルキィの様子がよく見てとれないの。


 魔族の爪が伸びて?

 まるで装具剣の様な形になってる?


 は?凄い?

 ミルキィが、そんな爪を…魔族の腕を斬り落とした?

 え?互角?魔族と互角なの?


「まさか」

「アレ…、ミルキィのヤツ、魔族にも負けてねぇ!す、凄え‼︎」


 偶に来る魔法の流れ弾。

 結界はまだ持ち堪えてる。でも、魔法が当たる度に輝きが増して来て、外の様子が益々見えなくなってきているの。


「ミルキィ!」

「クラリス!ダメだ。今、結界の外に出るのは、それこそミルキィの努力を踏み躙る‼︎」

「でも、ジオ?」

「信じよう、ミルキィは大丈夫だよ。数時間だとしてもさ。彼奴、魔界へ単独行やったんだぜ」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 馬鹿な。そんな馬鹿な!

 ダームの腕が!如何なる刃にも負けぬ我の爪が‼︎ 斬り落とされるなど、有り得ぬ筈。


 だが!

「我の刃が爪だけだと思うなぁ!」


 この風の刄ウィンズエッジは受けようがあるまい!


 パチン。


 な、何?

 何が起こった?あの魔人族は、何をしたと言うのだ‼︎ 我の刄が掻き消された?


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 賭けだったけど、思惑通りシールドは濃く輝きに満ちて。多分、中からは私達の動きが殆ど見えない筈。


 ダーム。

 やっぱり挑発に乗って来た。何て直線的な剣戟。

 甘いよー。コッチの大鎌は、ミスリルだって断ち切る事出来そうなんだからー。


 ズバッ!

 自信満々の右腕を撥ね飛ばしてやったぜー!


 そして…?風の刄ウィンズエッジ

 消えなさい!


 パチン。


 悪いけど、私の解析消去マテリアルキャンセルは、大魔王パパの魔法ですら打ち消す事が出来るの。アンタ如きの魔法で私のスキルに勝てる訳が無い。


 そして私は、解析した魔法をまんま返せるの。

 威力増し増しでね。


 悪魔の鏡デモンズミラーと何故、私が呼ばれていたか、たっぷり教えてあげるよー‼︎


 

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