第33話 野営地にて

「よし!此処迄かな。一旦野営地に戻る‼︎殿下、よろしいですね?」

「あ、あぁ。全軍、撤収」


 何だかなー。アライズ殿下って、ウィルバルトの進言に頷くだけみたいな。


 で、後から聞いた話。

 リアンナ殿下がアライズ殿下に噛み付いたらしい。


「あまりにも不甲斐なさすぎですわ!」

「そうは言ってもさ。適材適所だよ。上手くまわってるじゃないか」

「お兄様!」


 このやりとり。話してくれたのは実はリアンナ殿下じゃない。

 アライズ殿下の愚痴としてウィルバルトが聞いたんだって~。

 その、私達は野営地に宿泊したんだけど、殿下達はやっぱ王宮へ帰っちゃう訳で。

 2人のケンカに割って入る事になったアロン王太子も苦笑しながらリアンナ殿下を宥めたんだと。


 何だかなー。


 野営地に帰った私達は、何はともあれ食事の準備。即席竈門に薪を焚べると「ファイア」で着火。倒した魔物の中には食用に適したモノもいるので、それらを解体して調理。ついでに素材も収集するの。

「流石、解体慣れてるな」

「素材集めの基本だよー」

 眼球や心臓等、臓器や部位が製薬錬成の材料や触媒になる。魔物を狩って解体するのは錬金術師としての第1歩なんだから。

 で、アク取り苦味取り、匂い付けとか味付けとか。薬草を調味料としてアレンジするのも、ある意味立派な錬金術なんだよー。


「うわ、美味そう!」


 料理の手際が良いのは、私とプリシアだけみたいで。男子達はゆうに及ばず女子も貴族だと自分達でお料理する事無いだろうし。


「私もそこまで自慢出来る程じゃないから、ホントミルキィがいてくれて良かったぁ」

 うん、確かに。

 他のお嬢様方に比べれば、ってレベルだったし。


「お、美味い!」

「ホントに!このドレッシング最高‼︎ こんな葉をザクザク切っただけのモノが高級料理に感じる」


 うん、まぁ、それくらい出来るでしょーって葉物切らせてみたんだけどね。なんかブツ切りって感じで切ってたよねー。

 へへへ。そのドレッシング、私の手作り。

 母代わりの村長夫人ミランダさん直伝のモノにちょいと素材をプラスしてるんだ。


「スープ美味しい!温まる‼︎」


 季節は初夏。

 これからまだまだ暑くなっていく日常。でも、夜はちょっと冷えると思う。ちょい香辛料いれて身体の中からポカポカなる様にはしてるよー。


 勿論、気持ち薬効成分も入れてね。

 だから、コッソリ回復してるんだよ。

「は?そうなの?」

「ちょいね。調理過程に製薬錬成入れてるから。素材の攪拌だけの錬成生成陣じゃないんだから」

 竈門の上で軽く熱しながら肉野菜の旨み抽出だけをしてるんじゃないんだー。


「コレ、おかわり有るのか?ミルキィ、有るって言ってくれ!」

「とりあえず1人2杯分は作ったつもりだよ」


 おぉー!サンキュー‼︎


 がっつき過ぎ。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 成る程。

 平民だから、ある程度料理出来るとは思ってましたが、ミルキィのそれ料理は錬金術の裏打がありましたか。急な招集とも言える野外演習だったのですが、放課後に素材集めで夜半郊外へ行く事もあるミルキィは、素材や調味料を持ち合わせている様ですね。


 それにしても本当に器用な子だ。


 さて。

 思っていた通りアライズ殿下は、それでも他人事なのですね。陛下への報告が、少し憂鬱になりそうですよ。

 ですが、それを補ってあまり有るウィルバルトの指導力。彼は即戦力の指揮官級。中々今回の野外演習は初日から大収穫と言えそうです。


           ~ジャック'sリポート~

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