第32話 野外演習にて②

「ぐ、ぐはぁ」


 目の前で斃れる人族兵士。いや、騎士か?

 この程度か。


「だが、ザレフは敗れた。彼奴も破壊魔法はかなり持っていた筈。何故ムザムザ敗れたのか」

「人族を甘くみるな。彼等が持つ『神聖魔法』は決してバカには出来ぬ」


 高位魔族。いや、魔将と呼ばれる我等まで駆り出される。流石は勇者のうち建てた王国と言うべきか。


「王族に『剣聖』も生まれたとか。『勇者』に昇華スキルアップする前に」

「大魔王様に仇為す存在を、我等の手で」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 また王都で魔族の暗躍?

 …ソーンの危惧がホントになってくよー。


 さて野外演習なんだけどー。

 アライズ殿下がねぇ~。


「左よりフレイベア!2頭‼︎」

「南東上空よりヒュージホーネットの群!」


 森の、少し開けた所。

 そこから沢へ降りようかと言う場所に炎熊フレイベアの番がいて、どうも巣作りの途中みたい。子育てしようとしてたのか?

 人間が押し入って来た!ってなったから?激怒して向かって来たのー。


 それと同時に、私達をエサと判断したのか、デッカいハチヒュージホーネットの群も襲って来て。


 ココで間髪入れずに指示が飛ばないといけないんだけど…。アライズ殿下?


「ジオ!ギレン!フレイベアを押さえろ!クラリスは防御魔法を‼︎ソリアはその間に水球アクアボールを溜めろ‼︎で、ミルキィ!ハチは何とかしてくれ‼︎」


「おう!」「任せろ!」

「わかったわ」「水よ、我が力となりて眼前の敵を撃て…」


「はーい、ミルキィにお任せ!いくよー、タラちゃん」


 ウィルバルトの指示って、凄い的確。

 しかも判断はえぇー!


水球アクアボール!」


 ジオとギレンが足止めしてる間に、ソリアの呪文詠唱が終わる。ボール系攻撃呪文は少し溜の時間が必要なんだー。フレイベアは文字通り炎属性だから水属性攻撃魔法に兎に角弱い。


 従魔タラちゃんが翅を拡げて私は宙を舞う。ヒュージホーネットは見たまんまのデカいだけのハチ。私とタラちゃんなら瞬殺出来る。


「魔物駆逐、確認!」

「ハチ、やっつけたよー」


「警戒移行!」

 サーモンドが、気配探知レーダースキルを放つ。魔物は普通、魔核コアに魔力を強く持つから魔法探索で大体の位置がわかる。でも、偶に魔力を持たない、馬鹿力だけの魔物もいる。それらを探知出来るのが気配探知。息遣いすらわかるから、探知出来ないのはアンデットとか死霊スピリッツ系だけなんだよー。


「右前方、多分340m程。オークかゴブリンの群、10数頭と思われる」

「よし、先制をかける。我が剣に集え、雷撃の刃となれ!」


 抜いた剣が輝き出し、光が飛び散ると、それぞれが煌めく刀身となってく!


 雷撃属性魔法剣サンダージャッジメントだ‼︎魔法剣士のレベル3スキル?凄い!


雷鳴剣サンダージャッジメント!」


 煌めく刀身が放たれ、やがて光の矢の如く魔物の群れがいるであろう場所に炸裂した。

 ホントに凄い!


「ウィルバルト!いつの間に?」

「先日、スキルレベルが上がってね。魔力の殆どを使うから、1発しか撃てねぇ。だからとっておきの切札だよ」


 私は空中からウィルバルトの横に降り立つと。

「コレ飲んでー。魔力回復薬マナ・ポーション。半分も飲めば全快出来ると思うよー」

 薬瓶を渡す。


「サンキュー」

 グビ、ゴックン!

「成る程。コイツさえ有れば何発でも撃てそうだ。助かるよ、ミルキィ」

「へっへー。コレが本分なんだよー」

 私は錬金術師なんだからー。

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