第31話 野外演習にて①

 着せ替え人形となった翌日。

 再び学院で。


 ってか、休日のお買い物。

 楽しかったけど、スッゴイ疲れたー!


 まぁ、カッコいいーズボンとか買えたけどねー。

 野外演習なので、今日早速着てるんだよー。


 そう。

 野外演習なんだー!


「本日より野外演習です。今回はアライズ殿下が総指揮官として、部隊は特Aクラス全員。リアンナ殿下も部隊員として参加します。皆さんはそれぞれの才で役割を担って下さい」


 担任ジャックセンセーが朝礼でいきなり宣言した。

「はい?聞いてないですよ、先生」

「そうですね。カリキュラムの急な変更は申し訳ないのですが、少し事情が変わりました」


 そう言えば、先生の顔が少し深刻?

「昨日、王宮魔導士団の探索結界に高位魔族が確認されました。残念ながら迎え撃った近衛騎士達と魔導士は倒され、魔族は逃亡しています。現在も魔導士団が探索中です」

 マジ?大事だー。

「ミルキィ達の報告の事もあり、特Aクラスは、少し実戦的なカリキュラムを増やす事になったのです。勿論、皆に兵役義務等有りませんが、王国としても魔族に対抗出来得る力を育てる事を重点的に取り組みたいとなりましてね。幸い、此処には魔族と相対し撃退した者もいます」


 私じゃなくて従魔タラちゃんだよー?

 そう言ってる筈だよー?


 皆んなが私を見てる…。


「私が総指揮官なのですか?リアンナでもミルキィでもなくて」

「貴方です、アライズ殿下。貴方はリアンナ殿下共々『勇者』候補です。どのみち王子である貴方は国軍の指揮をとる立場にもゆくゆくはなると思いますよ」

「それは王太子である兄上が」

「王太子殿下が指揮を取るのは勿論ですが、総大将が最初から動く訳にはいきませんよ。その時は貴方が実戦指揮官ではありませんか?」


 ちょい気になるんだよねー。

 アライズ殿下って、全て他人事みたいって。


 兄王子が王太子。

 妹王女が『剣聖』。


 王位も勇者も任せてOKって感じ?

 そんな呑気さが見えるんだよねー。


 そんなこんなで、私達特Aクラスがやって来たのは王都郊外のヴァルナスの森。練習迷宮と違い実戦だよ。


 部隊編成は。


 指揮官 魔法戦士アライズ殿下

 副官兼護衛 騎士科魔法戦士ウィルバルト

 護衛騎士 騎士科魔法戦士トーマス


 前衛  剣聖リアンナ殿下

     騎士科戦士ジオ

     騎士科戦士ギレン

     騎士科戦士マリク


 魔法支援 魔導師科魔法使いソリア

      魔導師科魔法使いカーター

      魔導師科魔法使いベンジャミン


 回復支援 神聖科聖女クラリス

      神聖科僧侶エバンス

      魔導師科賢者セレンディア


 探索支援 商業科商人サーモンド

      商業科商人プリシア


 補修支援 工芸科細工師フィリップ

      商業科商人シマック


 遊撃支援 錬金術科錬金術師ミルキィ


 って、私、遊撃なのー?

「先生!騎士科処か学院最強なんですよ?ミルキィを前衛にしないのは勿体なくないですか?」

 皆、特に騎士科から質問…ってか文句?


「確かに。ですが彼女には錬金術師としての本分、各種補助ポーション錬成もしてもらいます。それに野外なのだから、魔物が常に前から襲って来る訳ではありませんよ?」


 練習迷宮ですら上や背後もあった。

 ここは森。練習用の補正なんか無い。


「ですが…」

「マリク、卒業したら絶対ミルキィ抜きでの戦いだぞ。俺達は騎士として最前線に行く場合もある。でもミルキィは、そもそもこの国に留まる理由すらないんだ」


 皆がウィルバルトを見る。


「錬金術師の総本山はフラダリア王国だ。レクサンダルは大陸の覇者と言えるけど、錬金術は魔導より発展途上。ミルキィがゆくゆくフラン学術院へ留学するかもしれないだろう?」


 皆が、今度は私を見る。

 錬金術を極めるなら、それも1つの手だよねー。


「まだ先の話だよー?私、学院を卒業するつもりだしー、後5年は居るよー」


 卒業後なんて全然考えてないけど。

 ってか、初年度学院生が考える訳ないでしょー。

 

「先ずはこの先の河辺に拠点を築いてもらいます。夜半の見張を決めて下さい。状況にもよりますが、4泊はするつもりでいますから」


 本格的な実地訓練だわ。

 でも急だよねー。何故?


 王都に、王国に迫り来る災悪。

 私達はまだ、漠然とすら感じていなかった。

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