第29話 リアンナ王女の迷宮探索②

 迷宮探索。

 ガールズパーティ。つまり女性だけのパーティなんて古今例が無い。

 練習迷宮と言っても、それ程迄に迷宮探索って命懸けの冒険なのよね。


 ミルキィといると、全くそう思えないわ。


 今彼女は、ソリア達の真上にいる。

 飛行種バットの上位種ヴァンピールの群に、1階層にも関わらず、中程の広間で遭遇してしまった。天井も高く、羽音が聞こえてきた時には群れに襲われていた。


「タラちゃん!」

 背の従魔タラちゃんが、透き通った翅を拡げる。あっという間にミルキィは飛翔して、大鎌でヴァンピールの群れを斬り落としていく。

 大人でも持つのが難な程の大鎌。

 私達の中でも小さな方のミルキィが、自分の背より長い柄の大鎌を自在に振り回していく。

 確かにレア武器には軽量化の魔法がかかってるのもあるけど、あの大鎌は威力3倍増は有っても軽量は無い。私にはとても持てない重さ。

 それを縦横無尽に振り回して魔物を屠っていくミルキィ。その腕力筋力は大人の男性をも超えてるとか。魔人族MIXの力は凄い。

 宣言通り、ミルキィは背後からの敵と上空からの敵を見事にシャットアウトしてくれてる。


 前回の迷宮探索の時、背後から襲撃バックアタックで最後尾にいた私は致命傷に近い傷を負った。その為、パーティは魔法支援が無くなり探索出来ない状況に追い込まれた。既にポーションを使い切っていたので、リーダーのウィルバルトは私を抱えて、必死に1階層入口近くの『癒しの泉』へ戻り回復させてくれた。

 その後、魔法使いの隊列はパーティ中央とミルキィに聞かされた。

 冒険者では当たり前の事。

 でも私達は魔物と戦い道を開く事しか頭になかったし、森での戦い、荒野、迷宮で…、隊列の組み方が違うって言う冒険者の知恵を知らなかった。

 前列が戦防力強は、ある意味正しい。

 特に騎士の戦い方ならば。


 私達は、迷宮も前から魔物が来るとしか思ってなかった。そんな訳無いのに。


 今回、背後から襲撃バックアタックを防ぎ切っているミルキィをみて、最後尾の戦闘力防御力の重要性が身に染みる。

 結果、滞りなく私達は前進してるから。


 ミルキィは背後から、若しくは上から私達を見てる。「助言口出しするよー」って言ってたけど、ミルキィはリアンナ王女が考える時間をしっかり作ってる。聞かれたり、決断まで時間かかる時のみ「〇〇でいいんじゃないー?」って言ってくる。


 流石は単独行ボッチ冒険経験有り。

 本当に助言が的確。


 初年度攻略初の練習迷宮探索クリア記録達成。


 ミルキィのお陰ってクラリス達は言ってた。何せパーティ全員が、この記録保持者に認定されるから。

 おこぼれの成績評価。

 クラリス達はこの記録保持を己が功績に考えたくないみたいだけど、学院の成績記録として残るんだとか。


 ところでミルキィ。

 貴女、今ガールズパーティだからスカート姿で飛び廻ってるんだよね?


「まさか。第3班男子は見放題だったの。あんな感じでね。ホラ、急降下なんかするとおへそまで捲れるっていうのに」


 クラリス?

「制服以外に、それ程服を持ってないのよ、ミルキィ。村では、夏なんか下着で走り回ってたって言ってたわ」


 辺境って言うのも生温い程の辺鄙な村育ち。

 作業着なんて持ってる処か、存在すら考えてないのかもね。


「今度街で買い物しよう、って話にはなってるのよ」

「そこで、私の出番なの!」


 話に入ってくるプリシア。

 そうね。商業科で平民のプリシアの方がミルキィの価値観と合う筈ね。


「私もズレてると思われてるのかしら?」

「クラリス達、お貴族お嬢様と平民の服はね。ズレてるって言うと語弊あるかもだけど」


「皆さん、そろそろ階層BOSSです!」


 1階層でもBOSSがいるのは、ランクA迷宮ならではでしょう。


 いざ、参らん!

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