第19話 探索2日目〜第1班

「よっしゃああ!それじゃ、行くぜ‼︎」


 気合と共に、ウィルバルト達は迷宮へと入る。

 6つある練習用迷宮。

 今日は、俺達1学年特Aクラスと3学年Aクラスの2クラスが入る事になってる。

 それぞれ3班だから、6つ全ての迷宮を使う。


 どの迷宮に入っても、昨日の続きになる。

 俺達が挑戦し得る最大の迷宮として。


 残念ながら、11階層と俺達はミルキィ達第3班の15階層に負けた。今の俺達じゃ彼奴らより劣ってると認証水晶が判断した。

 でも、だからこそ迷宮探査最速クリアは譲れない処だ。

 その想いは、班員全員の想いだったみたいだ。

 俺達は1番乗り。

 第1迷宮へ入った。


「準備いいな、行くぜ」

 転移して入った迷宮。

 俺達の目の前には、4階層へ降りる階段がある。


 此処は安全に休息できるキャンプポイントでもある。僧侶エバンスや魔法使いソリアが『魔法防御』や『機動増速』等の支援呪文を唱えて。


 さぁ、4階層だ。


 今回、俺達は隊列を変えた。

 俺が最前列。で最後尾に戦士マリク。ソリアを中心にエバンスと商人シマックを真ん中へ。


 ミルキィが言っていた隊列を参照した。

 ソリアの最後尾は、背後襲撃バックアタック時に致命的危機に成り得る。昨日、それで俺達の探索は一時中断したんだ。

 魔法に対しての防御は、魔法でどうにかなる。

 物理的な攻撃は防具に頼るしかない。

 だが、魔法使いは革の胸当てすら装備出来ない。勿論盾の類いも。ローブとマント位しかないが、余程の高級品でもない限り、物理防御力を持つローブなんて手には入らない。俺達はかなり上位爵位の貴族なんだけど、金に明かした装備品と言っても限界がある。

 ゴブリンの一撃でソリアは背に深い傷を負い、まだ1階層だった事もあり俺達は迷宮入口付近にある癒しの泉まで後退したんだ。


 まだ職レベルの低い俺達では、回復呪文ヒールも応急処置程度にしかならず、回復薬ポーションも既に使い果たしていた。


 そう。

 俺達は回復呪文ヒールを過信し過ぎていたんだ。購買部で買える回復薬ポーションが高い効能を持つから、呪文の回復力もこの位有るモノと思い込んでいた。


 ミルキィのお陰で、購買部で売っている回復薬ポーションは効能1.5倍になってたって事。最初で説明受けたはずなのに。

 回復呪文ヒールは僧侶職レベル1の呪文だ。特Aクラスに入れる俺達は、入学数ヶ月であってもレベル1程度なんて奴はいない。エバンスもヒールを数回唱えられる。

 だがヒールの威力が増すのは職レベルで5以上は必要だ。

 5歳で女神サンディアに与えられるとは言え、入学時の10歳程度では職レベルは殆ど上がっていない。錬金錬成しまくり(そして失敗した)、7歳には一端の冒険者稼業だったミルキィ位なんだよ、職レベル5だったのは。


 まぁミルキィの場合は、稼ぐ必要があったかららしい。貴族と平民亜人の差と言えばそれまでだが、それでもこうなるとミルキィに対し俺達は出遅れた、と思わざるを得ない。


 それでも追いつけ!負けねぇ‼︎

 俺達、特に騎士科の奴はガムシャラにやるんだ。


 今度はちゃんと回復薬ポーションもかなりの数を確保してる。第3班に追いつける筈だ。


 だが、やっぱりミルキィとの差を思い知らされる事になった。


 マリクを最後尾に回すって事は、俺が1人で突破口を開く事だ。昨日はマリクと2人で斬り込んで対処していた最前列。1人でこなす事の厳しさ。昨日軽々とこなしていたミルキィの突破力、攻撃力との差に愕然とした…。


 後日、ミルキィに彼奴の凄さに感嘆した事を伝えたら、「ね、私の背にいるの只の翅じゃないんだよ」だと。


 彼奴にはランクSの従魔デスタラテクトがいた事、忘れてたよ。

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