第18話 特Aクラスの迷宮探索③

 リーン、リーン、リーン。

 サーモンドの持つ魔導具のベルが鳴った。


「ミルキィ、時間だ!」


 ジャック先生に渡された制限時間を知らせる魔導具。原理はよう知らん。だけど日没1時間前に、この魔導具は鳴る。


「もう少し進みたかったなー」

「だよなぁ」

「そう?かなりのハイペースで進んでると思うわ、ミルキィ。ジオも」

「まぁ、ミルキィが言うのも分かるよ。まだ俺達余力あるじゃん。何せアイテム鑑定だけできてるし。本当2人におんぶに抱っこで」

「サーモンドの目利きがないと、有意義モンかゴミなのか、全然見当つかないんだよー?私達じゃお手上げー」

「だよなぁ。さっきのアレ、石っコロにしか見えん」


 ランクD魔物、鉱石獣ガズルが落としたのは魔鉄鉱石の原石。錬金術師のミルキィは何となく分かったみたいだけど、これは錬金術より鍛治師の領分。工芸科の奴なら身体中の水分を垂涎にしそうな代物なんだ。

 岩そのものの身体を持つ魔物なんだけど、ミルキィの大鎌は、それをモノともせずに斬り裂いてしまった。


 あの大鎌、幾らなんだろ。

 商業科としては、やっぱ気になるよ。


 『刈取の大鎌』。

 錬金術師が装備する事で威力3倍になる超レア武器。それを魔人族MIXのミルキィがぶん回すのだから、その威力たるや!

 切れ味鋭く、刃こぼれなんかも全然みたいだし。

 Aクラスの工芸科鍛治師ドゥガンも「触りたい、弄りたい」って、ミルキィに嫌われてたよなぁ、アレ。


「準備できたー?そろそろ移動ポイント出るよー⁉︎」


 リーダー・ミルキィが号令かける。

 と、僕達の前に不思議な輝きの生成魔法陣が構成されていく。

 魔導具を目印として、そこに移動魔法ワープを跳ばすジャック先生の魔法応用術。


 この移動魔法を駆使した戦いで、ジャック先生は最強時空騎士の異名を持つ魔法戦士だったんだって。いや、多分今だってそうなんだろう。それくらいの実力があるから、僕達特Aクラスの担任なんて任されてるんだと思う。


 僕達は迷宮前広場に戻った。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「よし。全員戻ってきましたね。先ずは総括。第1班は、本日3階層まで到達。中々いいペースです。第2班は2階層のクリア寸前ですね。それに…、第3班は6階層?また随分飛ばしましたね。では本日の実習は終了です。明日は始業と同時に、この迷宮前広場に集合。各自の探索章を入口水晶にかざしてください。移動ポイントが現れ、今日の続きに転移する筈です。これは6つのどの迷宮に行っても同様です。同じ迷宮じゃないといけない事はありません。明日は3学年のAクラスも利用します。同じく3つ使う筈ですので、各自注意する事。いいですね」


 授業終わって、先生が総括に入る。


 第3班、ミルキィ達は6階層?

 ウィルバルト達の班が最速だと思っていたのに。しかも、第3班の迷宮は15階層って言ってた。認証水晶が彼奴らのレベルを、その階層まで行けるって認識したって事だ。


「おい、ジオ。お前ら、何てハイスピードで」

「やっぱ経験者は違うよ。隊列にしろ探索ポイントにしろ、さ。魔導師は後衛って常識だと思ってたし」

「じゃあ、お前達は?」

「俺が最後尾。前衛をミルキィ。ベンジャミンを挟んでクラリスとサーモンド。実際、背後からの襲撃バックアタック喰らうとね。彼奴の経験に助けられたよ」


 そう。

 俺達の探索が止まったのは、そのバックアタックのせいだ。魔導師科のソリアが襲われて、治療の間魔法の援護が無かった。

 隊列の常識は、俺達の思い込みでしかなかったんだ。


「それにタラが翅を拡げた時のミルキィの機動力って言ったらさ。彼奴、縦横無尽に飛び廻って魔物を倒していくし、飛行種バットなんかもガンガン斬り落とすんだ」


 そう。

 飛行種系魔物にも手擦った。飛び道具弓系武器なんて誰も持ってないし、魔法を当てるのも難しい。


「でも、飛び廻るって?ミルキィ、ズボンじゃないよね」

「全く無頓着。お陰で白いのがさ。チラチラなんてもんじゃねぇぞ!バッチリだ‼︎」


 おおー!

 あんなちっこいのでも…、あぁいや、勿論ジオも覗こうなんて思ってないだろうし、ワザと上を見上げる事もないだろう。そもそも主家の令嬢たるクラリスがいる訳だし。


 3つに分かれた騎士科の5人。

 俺達だけの反省会。


 結局、ミルキィの凄さだけを認識する結果になった。


 これ以上、彼奴に離されてたまるか!

 騎士科が5人もいて、錬金術科が首席なんて、後世まで何言われるか、たまったモンじゃねぇ。


 やる!やってやるぜ‼︎

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