第20話 探索2日目〜第2班

「ウィルバルト達はもう入った?相当ミルキィ達を意識してるなぁ。まぁ、負けてられないのは分かるんだけど」

 トーマスは騎士科の魔法戦士としては、錬金術師のミルキィに戦闘力で負けるのには忸怩たる想いがある。ウィルバルトは俺以上だろうし、これは騎士科全員の確固たるモノだろう。

 一方で諦めの気持ちもある。

 人族生まれのMIXとは言えミルキィは魔人族だ。その身体ステータスは俺達を遥かに凌駕する。


「腕相撲しても負けないよー」


 あんなちっこい女の子に、そう言われても俺達にはなす術もない。


「ほんじゃ、ま、俺達も行くか」


 2班全員が揃ったところで、認証水晶に探索章を提示する。水晶が煌めくと、俺達は2階層深部へと転移した。

 目の前の扉。階層BOSSの部屋。

「この部屋まで昨日と同じ隊列。で降りたら変えるぞ。昨日ジオから聞いたのを実践する。カーターとセレンディアを中に。フィリップとプリシラを背後に。特にフィリップ、盾役任せる事になるからな」

 最後尾は盾役。

 昨日、俺達は背後襲撃バックアタックは喰らわなかった。ある意味ついていたんだ。

 俺達と1階層しか1班が変わらなかったのは、この背後襲撃バックアタックのせいだってウィルバルトも言ってたし。

「責任重大だなぁ」

 とてもそう思えない呑気な口調。

 でも、そんな口調とは裏腹に、フィリップの責任感の強さはよく知ってる。剣技はともかく、工芸科細工師は、バンディッツメイルに革の盾まで装備出来る。ローブ姿のカーターやレザーアーマーのプリシラとセレンディアよりは、余程防御力を持ってる。

 バンディッツメイルは、ハードレザーアーマーの要所要所に鉄板で補強を入れた鎧だ。防御力アーマーポイントは金属製のチェインメイルやリングメイルに若干劣るけど突き攻撃に強い。

 ゴブリンやオークは槍を持っている場合があるから、この突き攻撃への防御力は地味に効いてくるんだ。


「行くぜ!」


 2階層BOSSオークジェネラル。

 オークとオークレンジャー、オークメイジを配下に持つ体格が良く皮鎧に剣まで持つ強敵。


魔法封じサイレンス

 セレンディアが先んじてオークメイジの魔法を封じる。が、彼女に向けてレンジャーが矢を放ってきた。

「そうはいくか!」

 ギレンが矢を叩き落とし、そのままレンジャーへ向かう。そして、その間にカーターの火球呪文ファイヤーボールが完成、生成魔法陣から放たれた火球がオーク達を包み込む。

「ギャアアアア」

 肉の焼け焦げる匂いが立ち込め、オーク達が絶命していく。

「ブゥギィイイイ!」

 オークジェネラルの一撃。確かに重そうだが、あんなスローな剣、喰らう訳ないだろ!避け状左手に回り込むと、俺は必殺剣を首筋に叩き込んだ。

「ブゥギャアアアア」

 皮一枚残して首を刎ねられたオークジェネラル。トドメ!俺は剣に魔力を込め胸を貫く。

「ギ、グ、ギャアアアア」

 魔核コアが弾ける感触。オークジェネラルが倒れ、2階層攻略が無事完了した。

 ドロップ品の剣やアイテムをプリシラが鑑定しマジックバッグにしまっていく。


 目の前に下階層への階段が出現した。


「じゃ、休息とカーター達は魔力回復も忘れずにな」

「分かってるよ」

 俺が言うより早く、カーターは魔力回復薬マナポーションを飲み干していた。

「ホント、ミルキィのポーションは抜群に効くよ。しかもコレ、スッキリと甘い。僅かに柑橘系の香りと甘味があるからスゲエ飲みやすいんだ」


 効能1.5倍で、味良く飲みやすい。

 ミルキィの錬成する回復薬ポーションは、今迄の常識を打ち壊した。


 飲み過ぎると逆効果。

 酩酊状態となり、尚且つポーションが効かない体質になってしまう。

 なので、好んで飲まれない様、やや苦味があったのが回復系薬ポーションだった。


 でもミルキィの錬成するポーションは、効能が高いので飲む量が少なくて済む。その上香りと甘味があり、スッキリと飲みやすい。


「ギルドが納品を懇願するのが分かるなぁ。コレ飲むと今迄のはとても飲めなくなるよ」


 ミルキィは戦闘力だけじゃなくて、本分の錬金術も凄腕なのがよく分かるよ。

 独自工夫と発想力。

 錬金術師の1番大事なモノ。それが類い稀な才となってるんだから。


「よっしゃ。じゃ、3階層へレッツゴーだ」

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