第9話 大魔王復活?

「では、苦しむ事なく女神とやらの元に送ってやろう。ククク、大魔王様より戴いた偉大なる呪文でくだばるがよい」


 これは?爆裂呪文?


「ミルキィ、下がって!」

 クラリスの神聖属性防御呪文?

 これは…、うまくいくか?

 コッソリと防御呪文を重ねる。錬金術師の私が全ての魔導師呪文を使える事、クラリス達にも知られたくはないから。


 ドゴゴーン!


 やっぱ、キツいか?

 と、クラリス達は大丈夫?


 クラリス?ジオ?デュブロさん?

 気を失った?


「ほう、この呪文に耐えたか。どうやら『聖女』として覚醒しつつある様だな。これは早目に芽を摘む事が出来る」

「ねえ、大魔王から貰ったって言ってたよね?」


 大魔王ベルドは勇者アレクが倒した筈。

 魔王なら兎も角、大魔王ってベルド以外には名乗らなかったのに。高位の魔族が勝手に呼称してるの?他の魔族にも実力を認めさせたの?


「そうだ。女神の元へ送る前に教えてやろう。新たなる大魔王様、レベッカ様が即位なされた事をな。あの類稀なる魔力、魔法にて我等が魔界を統べる女帝、大魔王と名乗るに相応しいお方なのだよ。その魔法お力は先の大魔王ベルド様をも上回るのだ!」


 レベッカが即位した?

 …誰が即位したって?


「レベッカって、確かベルドの娘だったっけ?」

「大魔王レベッカ様だ!魔人族め‼︎今一度、あのお方より戴いた偉大なる呪文を見舞ってやる」


 私はクラリス達を見る。

 生きてはいるよね?でも気を失ってる。


 …見てない。聞こえてないよね。


「偉大なる呪文?間違ってるよ。レベッカの魔法。その強さは強烈な攻撃魔法を持つ事じゃ無いんだから」


 やっぱり天地爆裂呪文メガデス

 でも…。


 パチン!


 生成魔法陣から繰り出される凶悪な魔法。

 でも、私達の元へ来る前に霧散消滅する。

「な、何を?貴様等、一体何をしたのだ!」


「レベッカの強さ。大魔王ベルドをも超える力は攻撃力じゃないんだ。どんな魔法でも打ち消す事が出来る解析消去マテリアルキャンセルがその本質。鏡にどれだけの呪文を放っても無意味でしょう?知らないんだ。レベッカの異名は悪魔の鏡デモンズミラーなんだから」


 確かに今の私は魔人族MIXだ。でも、ステータス的には、実は魔族の、大魔王の娘だった頃と変わってない。私を鑑定しても魔人族のステータスしかわからないんだけど、本当の私の中身ステータスじゃないんだ。多分、転生時の女神サンディアの小細工だと思う。見た目だけの魔人族。それが今の私。


 それに解析消去マテリアルキャンセルは呪文じゃない。私のみが持つスキルだ。その証が金色に煌く左眼。魔族の中でもあまり知られていないけど、私は元々オッドアイだったんだよ。


「な、ば、馬鹿な。そんな、そんな筈はない!」


 再び放たれる爆裂呪文。


 パチン!


 何度やっても同じ事だよ。


「何故だ…。まさか貴様が」

「教える気はないよー。例え、此処でアンタが死んじゃうんだとしてもねー」


 背に拡がる従魔タラちゃんの内翅。

 2人…もとい私達の力が合わさって、そのスピードは魔族ですら中々捉える事は出来ないと思う。


 そして、私の魔力を帯びた『刈取の大鎌』は下手な聖剣よりも切れ味鋭くなるの!


「ギャアアアア、おの…く、グハッ」


 魔族の確証。報告がいるから証拠として、そのデカい角をもらうよ。そして首を刎ねる。

 で、トドメ!

 大鎌は魔族の心臓である魔核コアに突き刺さる。

 でも、コアは物理的な力では破壊出来ない。

 魔法…魔力のみが、コアを破壊する力。

 属性付与の剣が必要なのは、このためなの。


「ギャアアアア…」

 コアに突き刺さった大鎌から直接送り込まれる私の魔力に、この魔族のコアは耐えられない。


 パリィーン。

 コアの消滅とともに、魔族も倒れ灰と化す。

 切り取られた角だけを残して。


「レベッカの名で、魔界を再統一したって言うの?一体誰が?」


 女魔族で、それだけの実力の持ち主。

 確かに心当たりはあるけど…。

 レベッカの姉的存在。ベルドが倒れて数100年。魔族ならば、まだ若手だわ。


「…ソーン、貴女なの?」

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