第8話 魔族の暗躍

 私達の前に現れた男性、神官ソンダク。

 でも、何だろう?何か引っ掛かる。

 この違和感は何?


「貴方が神官ソンダク?」

「そうだが、フム、まだ若い…若過ぎる様だが『聖女』の様だな。ある意味、これは暁光か?」


 和かな笑み。

 身近な存在たれ。確かに神官ならではの柔和な表情だけど。でも…。

探査魔力マナ・サーチ

 敢えて微量の魔力を飛ばす。

 これは魔人族だけが持っている力。魔族に近い私達だけが持つ、魔族の魔力に干渉して幻惑を打ち消すモノ。


「ぐっ、き、貴様!魔人族だったのか⁉︎」


 角を折ってまで人族に与した魔族の末裔すえは、魔族にとって勇者よりも不倶戴天の敵で憎しみも倍以上のモノがあるみたい。


「やっぱり。元から?それとも今さっき入れ替わったの?どっちにしても王都に入り込むなんて。いつから暗躍してるの?」


 神官ソンダクの柔和な表情が激変し、仇敵を見るかの様な怒り、憎しげなモノになる。瞳も紅く染まり、それ以上に、頭の両側に大きな角が!


「ひっ!貴方は?神官ソンダクは?」

 クラリスも後退り、彼女を庇う様にジオも前に出る。ディブロさんも同様。

「バカな。神官ソンダクが魔族だなんて」


「昨夜だよ。此処を拠点に活動している最中でね。神官にウロウロされては困るのだ。そう思って入れ替わったのだが、直ぐに聖女が来るとは」

「おあいにく様。偶々だけど、別件でおんなじ依頼受けたんだ」

「なるほど。人族で言う『最悪』というやつか」


 うん。正しい使い方だわ。


「ね、せっかくだから教えてよ。此処で活動してんのアンタだけー?」

「聞いてどうする?まだ子供の様だが」

「実習なんだから、せんせーに報告しなきゃなんないの!」


 ちょい軽めの口調。

 雰囲気、柔らげないと。

 魔族と相対なんてそーてー想定外だよ。クラリスもジオもカオ真っ青だし。

 大人のディブロさんも顔面蒼白。見た目にも角、大きいし。つまり結構高位の魔族。


「報告ね。まさか生きて帰れると思っているのかな。まぁ子供ではな。魔物畜生と違い、我等魔族にも慈悲はあるのだよ。苦しまずに女神とやらの元へ送ってやろう」

「で?質問に答えてないよー?」

 大鎌を構えつつ、私は更に咎める。

「フム。中々大物だな。面白い。では答えてやろう。私1人だ。隠密に事を運ばねばならぬしな。下位魔族を引き連れても、彼奴らは大袈裟に騒ぐだけだからな」


 本当に高位魔族だわ。

 せめて私1人で相対してたら、まだやりようがあったんだけど。クラリス達の前では出来ない…、でも、言ってられないか?このままじゃクラリスやジオ、それにディブロさんだって危ない。

 どうする?どうすればいい?


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 ミルキィの浄化薬。

 その効き目は抜群だし、彼女の大鎌は神聖属性か?って言える程ゾンビやスケルトンを斬り裂き、そのまま浄化していく。


 充分時間を稼いでくれた。

 この大地に浄化を!


創世の女神サンディアの御名の元に自然ならざる者達よ、大地に還りなさい!『エリア・ターン』」


 これで墓地の浄化は出来たと思う。

 そこへ現れた神官ソンダク。

 え?でも、何か違和感。

 確かに、その柔和な表情は神官ならではなんだけど。


 は?ミルキィ?今、何をしたの?

 え?は?神官ソンダクに…あれは?角?


 ま、魔族?

 え?ここ、王都…、魔族が?え?何?


「やっぱり。元から?それとも今さっき入れ替わったの?どっちにしても王都に入り込むなんて。いつから暗躍してるの?」


 ミルキィ?

 頭が混乱してる?魔族⁉︎目の前に魔族がいるのに?


「ね、せっかくだから教えてよ。此処で活動してんのアンタだけー?」


 ミルキィ?

 魔人族だから?魔族が怖くないの?


「実習なんだから、せんせーに報告しなきゃなんないの!」


 ミルキィ?

 そ、そうね。カール先生に…、いや、学院長?と、兎に角先生に報告しないと。でも、どうすれば此処から逃げる事か出来るの?

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