第10話 報告、…そして謁見

 カール先生から出された、クラリスへの神聖科実習のお題。

 バリンゲン墓地の浄化。


 そこで暗躍していた魔族との遭遇。


 学院へ戻った私達は、直様先生へ報告した。

「は?ま、魔族?馬鹿な、王都にいる筈がないでしょう」

 カール先生は最初、この話を信じてくれなかった。私達…私が証拠としての折った角を差し出して、それからが大騒ぎとなったんだ。


「じゃ、じゃ、じゃあま、魔族は、その魔族はどうしたの⁉︎」

従魔タラちゃんがとりあえず撃退しました」

 倒したとは言わない。

 私は、何とか追い払った程にした。

 幸い、私の従魔タラちゃんはランクS魔物のデスタラテクト。1vs1なら魔族であっても負けはしないと先生も思ってくれたみたい。

「な、なるほど」


 この事、帰りの馬車でクラリス達にもそう話している。まさか私がサシで倒したとは言えるワケない。


 カール先生からティオーリア学院長へ話がいき、私達は学院長室で改めて報告する。


「大魔王復活?」

「ハイ。って言うか、次代の大魔王が即位したって言ってました。その、大魔王レベッカと」


 現実ありのままを報告するしかない。

 天地爆裂メガデスを喰らい、クラリスの神聖属性防御呪文で何とか難を逃れた事。魔人族MIXのお陰で自分だけが意識を失わずにすみ、従魔を使ってかろうじて撃退した事。


「大魔王レベッカ?確か大魔王ベルドの娘だったわね。大賢者から聞いた事のある名だわ」


 そうか。学院長の母って、勇者パーティの1人大賢者ティアナ。ならばレベッカの名も知っていて当然だわ。


「王国にも報告しないと。この魔族の角は私が預かって良いかしら?」

「はい、学院長」

 証拠の品を渡す。つまりは丸投げするって事。

 私としてはそれがベストの選択。喜んでティオーリア学院長に丸投げするつもりでいた。

「そうね。ミルキィにクラリス。それにジオも。良い機会だわ。貴方達も一緒に謁見しましょう」


 は?私達に王宮へ行けと?

 国王陛下に会えとまさか仰っています?

 …その笑み、怖いデス。



 学院長から王宮へ直ぐ連絡したって。

 事が事だけに、翌朝には国王陛下に謁見出来る運びになった。

 本来なら礼服、或いは高級ドレス?

 学院の制服が、キチンとした礼服扱いになっているから、私達は窮屈なカッコはしなくてもすむんだよねー。


 で、通された応接室。

 謁見の間ではないから、私達も着座して陛下が来られるのを待つ形になる。


 程なくして、国王陛下と王妃殿下、王太子殿下、それに宰相閣下と近衛騎士団長、魔法師団長が入ってこられた。


「そのままでいい。久しいな、ティオーリア」

「陛下におかれては、ご機嫌麗しゅう存じます。此度は緊急に玉体をお運びいただきありがとうございます」

「ティオーリア学院長。それ程今回の報告は急を要する重大事と言う事だ。そして、彼等が報告して来た生徒達だね」

「はい、宰相閣下。手前よりケイン辺境伯令嬢クラリス、辺境伯近衛騎士団長ヤザン家次男ジオ。錬金術科で本年度首席入学のミルキィです」

「すると、この子が冒険者ギルドからの要望もあった例の錬金術師か」

「そうです。そして今回、魔族と相対し王都より撃退した殊勲者でもあります」

「いえ、私ではなく私の従魔によるものです」


 コレ、言っとかないと私自身が魔族を撃退したって思われちゃうよ。ま、実際はそうだったんだけど、その事実知られるのはとってもめんどーな事態になりそーだしー。


「ほう?君の従魔は?」

「デスタラテクトのウイング種です」

「なるほど。ランクSの魔物か。ならば魔族撃退も有り得る」


 サンキュー、タラちゃん。


「それで、その魔族が言う事には」

「大魔王ベルドの娘レベッカが、次の大魔王として即位したって言ってました」


 ベルドの1人娘の事は、やはり勇者伝説の中に出てくる。全ての魔法を使い熟し、父大魔王よりも膨大な魔力を持つって。


「だが、伝承ではレベッカは人族寄りの穏健派と言われていたが」

「私達魔人族の言い伝えでも、そうです」


 って事になってる筈。

 でも、当の本人が魔人族になってる事は知られてないけど。

 …多分。

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