第4話 気まぐれ

 頃合いを見てソーセージを取りだし、皿に乗せる。冷蔵庫からケチャップとマスタード取り出して、皿の隅に出す。サトウのごはんはもう温まっていて、私は電子レンジから取り出す。サトウのごはんとソーセージの皿と箸を手に持ち、私はテーブルに向かった。サトウのごはんの温かさが、私の冷えた指先に染みた。

 食事をテーブルに並べて、私はテレビをつけた。そして私は座布団に座った。私が休日の昼に見るのは大抵旅番組だ。その旅番組を適当に見ながら、私は朝食兼昼飯を食べる。


 すると、猫がベッドから降り、私の所へ来て、トントンと短い右の前足を私の太ももの上に置き、こちらを大きな丸い瞳で見つめた。こんなことをされれば、全人類が猫の望みを叶えようと躍起になるだろう。

 猫がこれをするのは、大体、餌皿がからの時である。私は立ち上がって、餌皿にキャットフードを入れて猫の前に置いた。このキャットフードを昨日は喜んで食べていたが、今日はお気に召さなかったようで、猫は直ぐに振り返ってベッドへと戻って行った。


 いつだって猫は気まぐれである。その気まぐれさもまた、猫の誘惑的な魅力の1つだ。

 前食いついたおもちゃに食いつかなかったり、前は食いつかなかったおもちゃに食いついたりする。そんな猫の気まぐれに振り回されるのも、私はなんだか幸せな気持ちになる。

 そして、猫がトコトコとベッドへと戻る時に、モフモフの猫のお尻が揺れる後ろ姿もまた実にプリティで、猫は何をしても様になるというか、絵になるというか、そういう美しさを持っているのだと感じる。


 そんな猫の姿は、普段感じている仕事の疲労や、掴みどころのない私の憂鬱を忘れさせてくれる。

 私はテーブルに戻って食事を再開した。

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