第6話

「林さーん、おはようございます。」

「おはようございます!源さん!」

「おぉ!前より少し元気そうだね!」

「えへへ。」

私の担当看護師の源 華夜みなもと かよさんはそう言った。源さんはお母さんみたいでとても優しいし、少し抜けているけれど我が子のように包み込んでくれるような人だ。

「……今日も久蘭くんのとこ行くんだよね?」

「はい!」

「わかった。今日は午後から検査あるからはやめに自分の病室に戻ってきてね。」

「わかってますよ〜!」

雪さんと話したあの日から私は樹のとこへ行き毎日スマホで樹の様子と私との日々を撮っていた。今日どんなことがあったかとか、昨日はご飯食べすぎてお腹こわしたとかだとか。どうでもいいことを言っているかもしれないが、私にとって樹との日々は大事だとあの事故からきづかされた。

私は樹の病室に着きスマホのロックを解除するとカメラのアプリをタップしビデオを押した。

「今日は12月18日〜!もうそろそろクリスマスだよ?はやく目覚めてねー!私はあと2日で退院するけどそのあとも毎日樹のとこ来るよー!」

と言い終わりスマホをタップしビデオの収録を終わらせる。今日もなにも動きなしか……。私は樹の病室にオレンジのガーベラの花を花瓶に入れる。

「お兄ちゃんからのお見舞いの花のおすそ分けだよ……」

お兄ちゃんはある花屋でバイトをしていて私が入院したことを知って花を贈ってくれた。お兄ちゃんも家を出て大学を通っていてその地域が私の高校と近いからたまに会うことがある。私はそのあと病室に戻る。すると病棟からエレベーター付近で雪さんを見つけた。私が声をかける前に雪さんがこちらに気づき

「あ!梨都ちゃんだ!」

「雪さん!」

「ちょっとこっちで話そうよ!」

と雪さんが連れてきたのは誰もいない談話室。ここには机とイスがあり、互いにイスに座ると

「どう?あのあとから」

「まだ目は覚めないんですけど、私は明るくなれた気がします。」

「そっか。よかった。」

と雪さんはニコと笑った。

「……おかしいな、もう少しで目覚めるはずだったのに……」

雪さんは私に聞き取れない声でなにか喋っていた。

「あ、あの雪さん?今なんて……」

「ん?あー!気にしないで!今日の夜ご飯なにかなーって一人言!」

「もー!雪さん食いしん坊だなー」

と2人で笑いあっていた。










「じゃあまたね!」

「はい!また!」

と雪さんに手を振りそれぞれの病室に戻る。













「……莉奈りなの願いは叶えてあげなきゃな……」


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