第5話

「林さーん、掃除入りまーす。」

看護師さんがシーツの交換と身の回りの掃除をしていく。私は病院の窓から少し曇っていて雪が降っている外を見る。あの日から私はあまり眠れていない。それに両足動かないから車椅子だ。退院するときは歩けるようになるとは言われたが、樹が未だに意識不明なのは変わらなかった。私は車椅子で病室を出て、1階にあるカフェに行った。するとそこに外の景色を見ている女の人がいた。とても綺麗で儚さを持っていた。

「あ、あの……!」

私はあまりにもその人に声をかけられずにはいられなかった。するとその人はこちらに気づき

「雪みたいに溶けてなくなっちゃたな……」

と呟いた。そのあとその人は表情を変えて

「どうしたの?」

「あ!えっと、あまりにも綺麗で……」

「あはは!綺麗なんて初めて言われた!ありがとう!」

その人が笑うと心が暖かくなった。なぜだろう……

「あ!私林梨都って言います!!」

私から声をかけてなにも名乗らないのは怪しい雰囲気でちゃうよね。私は焦って自己紹介をした。

「……!梨都って言うんだね……」

その人は私を見て少し悲しそうな顔をした。

「私は桐崎 雪きりさき ゆき。よろしくね!」

と無邪気に笑った。雪という名前がとても似合う人だと思った。すると雪さんは私の手を握り

「大丈夫。あなたは奇跡と心のひだまりを持っている。私の願い届いて……」

と意味が分からない言葉を言っていた。雪さんの手は冷たかった。それに力が弱かった。

「私5階の病棟なんだけど、梨都ちゃんは何階?」

「10階です。」

「うわー!遠い!同じ病棟だったらお喋りたくさんしたかったー!」

と無邪気に笑い明るい人だった。

「私の彼氏……私を庇って意識不明になったんです。」

と雪さんに言った。すると雪さんは

「そうだったんだね……」

「私どうすればいいか分からなくて……」

「なら大好きな人の傍にいなきゃ。一緒にいることが辛いわけじゃないでしょ?」

「は……はい。」

と雪さんは淡々と話す。

「必死に呼びかけると意識は戻りやすくなる可能性はあるかもしれないけど目覚める前にどんなことが起きたかスマホに残したり、目が覚めなくても2人で創れる思い出があると私は思うの。」

「記録を残す……」

私は自分のスマホを見る。電源をつけるとそこには特別の日でもないが2人で私と樹が寄り添っているのときの写真があった。

「樹……」

私はスマホに涙をぽたぽたと零す。雪さんは眉を下げて

「大丈夫大丈夫。」

と雪さんは私を赤子のようにあやす。


















夜になり病室で私はノートに

「毎日樹との記録を残すこと。それを樹のスマホに送ること。」



目覚めたら樹はなんて言うんだろ?きっと恥ずかしいからやめろよーって言うのかも。私は希望を持つことができた。



カレンダーを見ると12月14日だった。クリスマスまであと11日。


ねぇ、サンタさん。

サンタさんは欲しいものを届けてくれるんだよ?

お願い。私の足が復活してバスケと学校に行けるくらいにして。













樹を目覚めさせて。











樹に届けたい。この思い、この気持ちも。














樹を奪わないで












樹と私を引き離さないで













サプライズ!って言って目覚めてよ











病室に飾られているクリスマスツリーが儚く光ったのは気のせいだったのだろうか……

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