12. 来週の予定は?

封印されている悪魔の像にひび割れを見つけたロロン。急いで浄化しないと、封印が解けて悪魔が再び庭園をめちゃくちゃにしてしまうかもしれない……。

皆があたふたする中、そろ〜っとヒナタが手を上げた。

「質問なんですけど、なんでひび割れちゃったんですかね?」

ヒナタが先輩三人を見る。

「五年も経ってるから、封印の力が弱まってるってのがあるかな」

ツバキがそう答える。

「まー……あとは、乱暴にやりすぎたかな〜と」

ミナトが苦笑いしながらコンッと軽く像を弾いた。

「確かに……ガシガシやっちゃってましたね〜。この前、ミナト先輩なんか『今日はやたらと授業で当てられたんだけど!?なんでなんだぁあ!』って叫びながらこの像、ガシガシこすってたし」

ハルキがそう言うと、ギロリとツバキが冷たい視線をミナトに向ける。

「じゃあ、ひび割れの原因はミナトだね。うん」

「なんでだよ!?てか、ツバキだってこの前〜」

「はいは〜い、やめましょうね、落ち着きましょうね」

フィーナが2人の間に入って落ち着かせる。

「急いでこの悪魔の像を浄化したいが、今日はもうここまでにしよう。明日も頑張ろうな」

シュシュの言葉に皆が頷く。


ミオ達は秘密の庭園から学校へと戻った。

廊下が夕日の色で染まっている。

ぐぐ〜っとツバキが伸びをする。

「自販機に行ってもいい?なんか喉が乾いちゃった」

「あ、私も行きたいです!甘いのが飲みたいなぁ。糖分を摂取したい」

ヒナタがそう言えば、ミオやハルキ、ミナトも「自分も自販機に行く」と言い始めた。


自販機で飲み物を買った五人は、近くのベンチに座ってのんびりしていた。


「明日は、庭園にいる妖精達全員に声をかけて、浄化の手伝いをして欲しいって頼まないとなー」

すっかり空になったペットボトルで遊びながらミナトが言った。

ふと、ミオは気になったことを口にした。

「そう言えば……封印が解けてしまった場合は、どうするんですか?」

封印が解けて暴れ出した悪魔をどう対処するのかをミオとヒナタは知らない。

ミオの質問にツバキが答えてくれた。

「倒す。妖精と協力して魔法でね」

「ひょえ〜……悪魔と戦うんですね……」

ヒナタの顔が青ざめる。

「来週中には何とか浄化しきっちゃいたいなぁ」

ツバキがそう言えば、ハルキが「でも、めっちゃ厳しくないっすか?」と言う。

「え、ハルキ、来週は図書委員会が忙しいの?」

ミナトがそう聞けば、ハルキは一瞬、きょとんとした顔になった。

「もしかして……先輩方、忘れてるんですか?来週、三年生は遠足があるじゃないっすか」


しばしの沈黙。


「あああああ!?そうだ、遠足あった!」

「やっべぇ!めっちゃ忘れてた!!」

「そういえば、遠足の翌日に生徒会の仕事入ってるわ……」

「おいおい……普段は暇な風紀委員会も、遠足の前にあいさつ運動に身だしなみ検査……仕事が色々入ってるぅうう!!」

あわあわと慌てふためくツバキとミナト。


「え、えっと……つまり、来週はツバキ先輩とミナト先輩は、忙しいから庭園にあまり来れない……」

ミオがそう言えば、ハルキが「そゆことっす」と頷きながら言った。

「じゃあ、私とミオちゃんと、ハルキ先輩……この三人主体で悪魔の浄化を頑張るってわけですね!」

ヒナタの言葉にハルキは頷く。


「ううう……なんかごめんっ!」

ツバキがパチンッと手を合わせて謝る。

「そ、そんな……謝らないでください。せっかくの遠足、めいっぱい楽しんできてください。それと、委員会活動も頑張ってください」

ミオがそう言えば、ツバキは「シュシュをこきつかっていいからね!」と言ってくれた。


「そうだ、忘れないうちに音木と金森にいい情報を教えてやろう」

ドヤ顔のミナト。ミオとヒナタは首を傾げた。


「来週の月曜日に行われる身だしなみ検査で、よく引っかかる場所を教える!」

「あ、爪って聞きました」

「それと、校章バッヂのつけ忘れ……ですよね」

「な、何で知ってるの!?」

「帰りのホームルームで先生から聞きました」

ミオがそう答える。

ミナトはぐぬぬ……と悔しそうにした。

「有益な情報を教えるかっこいい先輩になれるチャンスがぁ……」

ハルキが軽く肩を叩いた。

「それとミナト先輩、あいさつ運動の日は早起きしないと間に合いませんよー。風紀委員会が寝坊はヤバいっすからね〜」

「おい、ハルキ。まるで俺がいつも寝坊して遅刻してるみたいな言い方だけど!?俺、一度も遅刻したことないからな!」

「毎日、ギリギリ滑り込みだけどね」

ツバキが呆れた顔をしている。


ヒナタとミオはふふっと笑う。

「先輩たち、面白いねぇ」

「そうだね」


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