6次会 最終ステージ
最終ステージが始まった。
各チームの楽曲が順番に行われて行った。
ムーンライトドームには、満員のお客さん。
それぞれが推しを力の限り応援している。熱気はライブそのものであった。
登場するチームによっては、ちょっとしたアイドルのライブ以上に盛り上がりを見せていた。
「藤木君、やっぱり彼女たちってすごいね、もう立派な酒姫に見えるよ!」
部長が興奮して僕に話しかけてくる。
こんな広い会場で歌えて、ファンもこんなにいて。
酒姫になれるかどうかの大事なオーディションだからなのか、いろんなチームが一度に見れるからなのか。けど、そこまで思い入れがあって応援しているからこそ、現地まで来ているのかもしれない。
ステージ上でパフォーマンスを行う彼女たちは、もはや酒姫であると言って良いと思えた。
各チームの楽曲が始まるたびに、会場を埋め尽くすペンライトが光った。
予めファン同士で示し合わせていたのか、登場する酒姫に合わせてペンライトの色が変わっていって、それは幻想的な景色であった。
楽曲が始まり、眩い光が辺りを包む。
僕と部長もそれに合わせてペンライトの色を変えて、ただの一酒姫ファンとして楽しんでしまっていた。
「やっぱり、こんな所でライブを出来ていること自体が凄いことですね。ここまで来れて本当に良かったです」
「まだ、ここで満足してちゃダメだよ? 酒姫部も、推し活部もまだ出ていないからね!」
そうこう言っていると、二階堂さんたちのチームの番になった。
「二階堂氏のステージだよ! ペンライトを降りたい気持ちもあるだろうけど、しっかり撮っておかないと! 藤木君の仕事だよ! 僕が代わりに応援しててあげるから」
ファーストステージに引き続き、予め申請していた関係者だけは撮影が許可されていて、持ち込みができた。
応援は後回しにして、ビデオカメラでズームアップをして二階堂さんチームを撮った。
肉眼では見れない部分までズームアップする。
少し緊張してそうな表情に見えて、動きも少し硬いように感じたが、楽しそうに踊っていた。
「あとで、僕も見るからね! ちゃんと撮っておいてね!」
そう言われたので、あまりズームアップはしないように、撮るの専念することにした。
誰か一人にズームばっかりしていると、記録としては良くないかと思い、全体を撮るように気を付けていった。
撮るのに集中しているとすぐに終わってしまった。
連続で、うちの酒姫部のエースチームの順番になった。
このチームでは、2年連続出場と言っていたからか、今までの声援よりも一層大きな声が会場に響いていた。
ファンの人数が他のチームと比べて、とても多いように感じた。
一通り、踊っている酒姫部のメンバーの表情を撮る。
ステージへの慣れもあるだろうが、声援を味方にして生き生きと踊っている。
ちゃんとコールにも答えていて、さらに会場は盛り上がりを増していった。
この会場に、こんなにもファンがいるのかと驚いた。
「敵ってわけじゃないけど、やっぱり酒姫部は強いね。もう立派な酒姫だね……」
大いに盛り上がって、パフォーマンスが終わった。
会場には今までにないくらいの拍手が鳴り響いた。
「……藤木君、次が推し活部だよ!」
そういわれると、ビデオを撮る手が震えてきた。
このステージのために、頑張ってきたようなものだ。
きっちり撮らなければ……。
ステージに上がってきたみんなは、暖かい拍手に包まれた。
緊張はしているように見えたが、そこまでガチガチではなくて、ほどよい緊張感が漂っていた。
パフォーマンスが始められた。
3人の綺麗な歌声が、大きな会場に響く。
それぞれの良さを出すように、みんな合わさった良さを出すように、推し活部みんなで決めたパート分け。
ダンスにしても、フォーメーションにしても、みんなで一つ一つこだわって決めていった。
パフォーマンスしている今が勝負の時なのだけれども、ここに来るまでの過程をみんなで頑張ったからこそ今に繋がっていると思えた。
次々に、パート分けした通りに、歌う人が変わって、畳みかけるようにして歌っていく。
とても楽しそうであった。
ステージ上でも、互いにアイコンタクトをしているのが、カメラのズームアップから見れた。
そんな風に一生懸命に歌って踊る姿に、僕は自然と涙が流れ落ちていた。
「本当に、ここまで来れてよかったです。いままで頑張って良かったです。とても皆さん輝いている……」
涙で視界が、滲んで見えてしまう。
それでもカメラはブラさずに、できるだけ綺麗に残そうと頑張った。
推し活部のステージは、あっという間に終わってしまった。
酒姫部ほどでは無いが、大きな拍手に包まれていた。
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