7次会 結果発表

 ムーンライトドームで行われている酒姫オーディションライブ。

 ライブなのだけれども、ステージを通してオーディションが行われている。


 僕たちのチームは、やるだけのことはやったので、後は残りの最終ステージを楽しんだ。


 ビデオカメラには、推し活部のみんな、酒姫部のみんな、今まで見た中で1番の笑顔が収められてる。


 こんな立派なステージ、ムーンライトドームまで来れただけでも嬉しい。

 最後のチームのパフォーマンスも終わりを告げた


「……みんな、やり切ったね」

「会場のペンライトだけじゃなくて、彼女たち自身もピカピカに光って見えました」


 部長は一度深呼吸をした。

「……結果がどうなっても、前を向いて暖かく迎えてあげよう」


 ◇


 最後のチームが終わった後、少し休憩があったのち、司会者の人がステージあらわれた。

「全てのチームの審査も終わりました。それでは、いまから入賞しました3チームを呼びたいと思います」


 辺りはペンライトの光も消されて、静寂に包まれていた。

 ステージ上にいる司会者の人にだけスポットライトが当たっていた。


 暗闇の中で、未来の酒姫たちはじっと堪えていた。

 歌っている時は、酒姫たちはファンからペンライトの光を当てられていたのに、今は暗がりに潜んでいる。

 ここからは、一部のチームにしか光が当たることは無い。

 厳しい勝負の世界。泣いても笑っても、この結果発表が最後……。



「第3位……」


 会場にも緊張が走った。



 暫く間が空き、呼ばれたのは知らないチームであった。


「ファンからの熱い声援に支えられて、とても輝いていたチームでした。3位おめでとうございます」


 僕たちの隣の席にいた人は、泣き崩れていた。

 このチームを応援して、ここまで来ていたのだろう。

 嗚咽交じりに泣いていた。

 こんなにも推しへの気持ちが強かったのだろう……。



「それでは、第2位……」


 2位に、酒姫部のエースチームの名前が呼ばれた。


「おおぉ!」

 思わず僕と部長と声が漏れた。


「すごいよ、藤木君、2位だよ!! やったよ! 入賞出来ていなかった数年を打ち破ったよ!」


 去年の悔しさがあったのだろう、結果を貰うと酒姫部のメンバーは泣き出していた。

 そんな様子も、僕は冷静にカメラを回していた。

 嬉しいけれど、こうなると、あと一枠しかなかった……。

 ……優勝なんてできるわけ……。

 ‌カメラを持つ手に汗が滲んだ。



「続いて、栄えある第1位……」


 残る一枠。


 緊張の中、呼ばれたチーム。

 それは、僕たちの知らないチームであった。


 ‌会場からは、割れんばかりの大きな拍手が鳴り響いた。


 こんなにも大きなライバルたちのいる中で、入賞するなんてことは夢の世界であった。まして、優勝なんて。


 酒姫部を超えるなんていうことも、やはりできなかった。


「……うん。よく頑張ったよ、みんな!」


 僕は悔しくてどうにかなりそうであったが、それでも僕にできることと。冷静にカメラを回し続けていた。


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