第21話 ムトナシアにて
雨が上がった。
二人の遺体が運ばれて行くのを確認すると、
ようやくセレス達は重い
ホセとイヴァンは、自分達が
ミリアは、メンバーを二つに分けたことを
ベリエッタは、敵をすぐに見つけられなかったことを
アンネは、ティナを止めなかったことを
ティナは、一人で何とかしようとした自分を
フランは、自分の能力の限界を
セレスは、レイに手紙を書いたことを
「(レイ…。ステファン…。)」
形見代わりに持ってきたレイの
セレスの
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四日後の早朝。
ムトナシア国の王宮が見えてきた。
正門に
その横でそれぞれ周囲を
二人組の兵士がやってきて声をかけてくる。
「通行証はお持ちですか?
招待のお手紙でもよいですが…。」
「私だ。」
ミリアが鳥車のドアを開けて顔を見せた。
「!
兵士二人が
「マルセロ国王に会えるかい?
大臣のトビアスでもいいが…。」
「確認いたします!」
片方の兵士が
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「やあ!久しぶりだね!ミリア!」
とマルセロ国王がニコニコしながら入って来た。
真っ白な長い
白い口ひげとアゴひげを生やした初老の人物で、
背はミリアと同じくらい、
少し太っているように見受けられる。
セレス達は立ち上がるが、
「やっと私の末っ子のプロポーズを受けてくれる気になったかい?」
「あっ!それとも、我が国のお
「あるいは、我が国の
セレス達は完全にあいさつするタイミングを失くした。
「あー…、すまない、マルセロ国王。
仲間を失ったばかりでね。
あなたの
ミリアがピシャリと言った。
それを聞いたマルセロは、
「…それはすまない。」
と急に真顔になり、席に着いた。
セレス達も席に着く。
「…それで?どこまで知っている?」
ミリアが身を乗り出すようにしてマルセロに
「表向きは、君がナルグーシスまで
クーデターの
とマルセロは答え、
「…だけど、ルザとレアに何かあったんだろう?
一カ月ほど前に、
『仲間を待たせているから。』
とすぐに行ってしまったがね…。
それなのに、君までわざわざ出向くという理由が無い。」
とテーブルの上で両手を組みながら続けた。
それを聞いたベリエッタが、わずかに顔を
「ああ…。」
ベリエッタをチラリと見ながらミリアがうなずき、
「二人は先行してナルグーシスに向かっていたんだが、
と言った。
「やはり…。」
マルセロは険しい表情になって、テーブルの上をしばらく見つめると、
ぐっと目頭を
「父上と母上の知人なのですか?」
セレスが思わず
「…君は、ご子息か。
よく似ている。」
とセレスに視線を向けたマルセロは言う。
「
こっちは妹のフランシスカです。」
セレスが言うと、マルセロは
「申し
私はマルセロ・ホルツバーグ。
君のお父君のお父君。
つまり、君のおじいさんと友人だったんだ。
ルザには、自分の息子のように接してきたつもりさ。」
と言い、
「ルザとレアが
と
「悪いんだが、昔話もそこまでだ。」
ミリアがそこに口を
「ナルグーシスのクーデターの情勢について
国王が亡命したそうだが…。」
と続ける。
「ああ。ひどいもんさ…。
我が国からも兵力を送り出したが、
…今は、わずかな生き残りがトルネオで手当てを受けているそうだ。」
マルセロは再び険しい表情になった。
「どういうことだ?」
ミリアが
「生き残った者の報告書では、
『夜明けと共に
と。」
マルセロが言う。
「…それだけ?」
ミリアが再び
「そうなんだ。
何名かの兵士から同じ報告を受けている。
だが、数千という規模の
マルセロは申し訳なさそうに言う。
「まるで分からないな…。」
ミリアもアゴに手を当てて考え
「だが、その報告を受けて、
オルトエスト国では、水の
マルセロが言う。
「ふむ。なるほど?
火には水を、というわけか…。
実はクーデターが起きた当初から、
イガラシ
ミリアが言う。
「そうだったのか。それは初耳だ。」
マルセロはうなずくが、
「ただ、敵の
敵の正体も実はよく分かっていないんだ…。
ナルグーシスの軍事クーデターだったはずが、
ルヴィアやトルネオでも内乱が起こっているようでな…。
まるで
と頭が痛いという風に片手で頭を
「新たな
ミリアがそう言うと
「ふむ…。
仮にそうだとしたなら、
勝ち目なんてないのかもしれないな…。」
マルセロが再びテーブルに視線を落とす。
「そこは問題ない。
ここにいるからな。」
ミリアがセレスとフランをアゴで示す。
「何だって!?」
マルセロが
「改めて
ミリアが言うと、セレスとフランは頭を下げた。
「これはこれは…。」
マルセロも頭を下げた。
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ムトナシア王宮の正門前の鳥車止めに
「…めぼしい情報は得られなかったな。」
ミリアが
「父上は、この国の出身だったのでしょうか?」
セレスがミリアに
「そうだよ。
私もルザもこの国の生まれさ。
ルザはその辺りの話は、してなかったんだな。」
ミリアが答え、
「せっかくだし、墓参りでもしていくか。」
と言うと、王宮の北側へ向かって歩き出した。
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ムトナシア王宮の北には大きな墓地があった。
墓地の一画でミリアが立ち止まる。
ミリアが立ち止まった場所にあるお墓にセレスは目を
『セルジオ・ブランパーダ』
『グロリア・ブランパーダ』
と書かれている。
「
セレスが
「そうだ。
ルザの父君と母君だな。」
とミリアは静かに言った。
そして、
セレスとフランがお
ミリアはさらに墓地の
また一つのお墓の前で立ち止まった。
今度のお墓はかなり大きい。
セレスが近づくと、
ミリアは、チャリン…と金貨を一枚そのお墓に供える。
『ビクトリオ・ロウェキ』
とそのお墓には書かれていた。
「先代の火の
セレスが
「金にがめつい、変わり者のジイさんだったよ。」
とミリアは
「…ああそうだ。
次の目的地は、ススエバという町を目指すぞ。
ここから東だが、すぐそこだ。
ウサルト
とセレス達を
「そこに何かあるんですか?」
セレスが
「んー…。
あると言えばあるし、ないと言えばないな。
着いたら教えてやるよ。」
ミリアはスタスタと墓地を後にした。
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その日の夕方。
ウサルト
「目的地は町の南側だ。」
町の入り口で鳥車を降りたミリアが歩き出す。
セレス達もぞろぞろ着いて行った。
そして、
大きな建物が見えてくる。
「ここは…図書館ですか?」
建物の前の
『王立図書館』
という文字を見たセレスが言った。
「ああ。探し物があるんだ。
と言っても、ソリアードの図書館には無かったからここに来てみただけで、
有るかどうかは分からないんだがね…。」
言いながらミリアが中に入っていく。
図書館の受付にいる司書の男性を前にすると、ミリアは
「すまない、司書さん。
『スドリャク教の聖典』
なるものは置いていたりするかな?」
と
「!」
セレス達はバッとミリアを見る。
「…はい。確か、ございますよ。
ご案内いたします。」
司書の男性が立ち上がり、案内してくれた。
そして、
辞書のように分厚いその本、スドリャク教の聖典は、
図書館の一画、
『宗教』
に区分けされた
ミリアはスドリャク教の聖典を持って、
セレス達もその周りに座る。
「私は席を外していますね。」
アンネは、この場で中身を見ると分かると、
そう言ってスタスタと図書館の入り口へと
「(
『トレトス教的にはアウト』
というやつなのだろう…。)」
「さてと…。」
ミリアが言うと、パタリと表紙をめくり、
最初から順に中身の朗読を始める。
てっきり
要約すると、
神である
その旅路と試練を
延々と
旅路の最終目的地がスドリャクと呼ばれる聖地であり、
試練を
ある者はケガをし、ある者は病気になり、ある者は心を折られ、
次々に旅から
そうして
ある者は貧しく、ある者は
その命を終えてしまうというのだ。
ということは、
おそらくこの
スドリャク教を
『
という動機こそが、
その
「えーと…?ちょっと待てよ?
おいおい、まだまだ試練の神々がいるようだな…。
とても数えきれないぞ。」
ミリアは指を折りながら、登場する神々の名前を数えようとしていたが、
あまりにも厚すぎるこの聖典は、とても一日で読める量ではなさそうだ。
「これから
何かヒントはないかと思っていたんだが…。
やれやれ。
『敵の能力は未知数。』
ということが分かっただけだったな…。」
ミリアは天井を見上げてため息をついた。
「逆に言えば、
『常に
ということだろう…。」
ベリエッタが
「そういえば、ベリエッタはどうして敵の
ミリアがベリエッタを
「それは…。」
ベリエッタは言いよどんだが、
「…恥ずかしい話だが、
オルトエスト国のビウィス
従業員に
『まだ
と油断していた…。」
と顔を
「クプル…。」
そう言いながらセレスは、キャスデラックでタウンクライヤーの
ロジオンに
「(常に
もう二度と油断はしない…。)」
セレスは両手をギュッと
「…確か、ニキータという
そのクプルという町だったな。
次はそこに向かってみるか。」
ミリアが立ち上がり、言った。
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