第11話 歴史の謎
「『トレトスとニーヴェは、
以外にも実は疑問点がまだあるんだ。
私が
ミリアは荷物からペンと紙を取り出すと、
カリカリと以下の四
・トレトスの出自
・トレトスの
・トレトスはなぜ
・トレトス教の
「まず、
『トレトスの出自』
についてだ。
トレトスは大戦中にその功績によって
名字を持たなかった。
つまり、
ミリアの言葉に、
「えっ!?」
とセレスとフランが
「トレトスは
ほとんど点数が取れていないんだ。
つまり、読み書きがほとんどできなかったらしい。
この点を考えてもおそらく
とミリアが告げる。
「だが、
この件については後の話に関係がある。」
ミリアが言うと、その次の
「次の疑問点は、
『トレトスの
についてだ。
当時、
つまり、トレトスも本来であれば防衛として、
城や
ミリアが
「ということは、おそらくトレトスは
前線に配置されてから
そしてなぜか
その理由は様々だ。
自分から志願したり、
隊律
ミリアがため息をつく。
セレスとフランは複雑な表情をした。
「
ミリアが言うと、フランが口を開いた。
「いっぱい
それを聞いたミリアは、
「そうだな。その可能性は高い。」
とうなずき、
「実際、
言いながら、ミリアはその次の
「次は、
『トレトスはなぜ
なんだが…。
フラン。人族と
その原因は何だか分かるかい?」
ミリアがフランのほうを見て
「えー…?
領土争いとかじゃないかしら?」
フランは首をひねりながら答える。
「ん。そうだな。
それも原因の一つだ。」
ミリアがうなずく。
「もう一つの大きな原因は、
人族と
最初はどっちが
ある時から人族も
『あいつらは、オレ達を
とね。
だから、人界と
先手を打ってすぐに
ミリアが言いながらピンと右手の人差し指を立て、
「ケンカでもよくあるだろう?
ケンカしている者同士が、
『自分が正しい。相手が
と思って行動していたのさ。
もっと
『自分が正しいから、相手の物は
相手を傷つけたり殺したりしてもいい。』
と思っていたってところかな。」
ミリアはそう言うと、やれやれといった感じのポーズを取り、
「そういったことが
負けたほうは勝ったほうの言いなりになるのが当たり前だった。
フランが言ったような領土を
あるいは市民を
と言いながら指を折った。
「ところが人族と
最初から
人族の国の法律や制度こそ
ほとんどの
むしろ実力主義的な側面が
とミリアが言うと、
「それがトレトスの働きによるものだったのですか?」
セレスが
「そうだ。
トレトスは、
『
それは種族としてのプライドであり、家であり、友であり、家族である。
これ以上
と主張し、
もう殺さないようにと各国に頭を下げて回ったらしい。」
ミリアが言い、
「そしてこうも言ったそうだ。
『
それに反するならば私が
とね。
最強の
実力主義が染みついていた
ミリアが
「言ってることが
セレスも
「まあ、
『人族の法に従うなら不当な
ということが言いたかったんだろう。」
ミリアはそう言ってから、
「ただこの事は、さっきの
『前線に
の結論で我々が考えた、
『いっぱい
という理由とは明らかに
なので、合わせて考えるなら、
『戦争を早く終わらせたかった。』
そして、
『自分のような
というのが
と続け、セレスとフランを再び
「さすが勇者様!」
フランは目を
「なるほど。
セレスも
ミリアもうなずくと、その次の
「次は、
『トレトス教の
についてだ。
トレトス教という名前からすると、トレトスありきのように感じると思うが、
実はトレトス教は
『アミュラス教』という名前で、大戦前からあった宗教なんだ。」
ミリアが言った。
「へー、そうなんですね。
…まあでも、
セレスが
「いいや。
当時のアミュラス教というのは、今のように大きな宗教団体ではなく、
乱立していたたくさんの宗教の一つに過ぎなかったんだ。
つまり、トレトス教に入っているかどうかと
実は全く関係ないんだ。」
ミリアが言うと、
「えっ!?」
セレスとフランが再び
「考えてもみろ。
前回の座学でも言った通り、動物や
そこにトレトス教の信者かどうかなんて、関係があるはずがない。」
ミリアは断言する。
「しかし…、トレトス教の聖典では、
『罪深き
この聖典を理解し、
はじめて神の
と教えていますよ?」
セレスが聖典の内容をそらで引用しながら
「だったら、アミュラス教の信者でない人間ばかりだった時代の戦争で、
アミュラス教に入れば強くなれる可能性があるんだったら、
ミリアが
「それに、世の中にいる
聖典の内容に明らかに背いている悪人だって
何なら
と続け、
「アミュラス教が今のトレトス教となって大衆に広まったのは、
大戦によるトレトスとニーヴェの功績を、
『
と当時のアミュラス教の法王や司教達が、
さも自分達の宗教が正しいかのように宣伝し、
そう見せかけるために宗教団体の名前から聖典の内容まで、
改変してしまったからに過ぎない。」
と、まくし立てる。
セレスもフランも何も反論できない。
「まあ、今だって聖水と
成人の
必要だからと何かと物を売りつけたり、
その祭事の会場への出店料を受け取ったりと、
とても真っ当な宗教とは言えないような
ミリアが
「…ああ、
そういうお
って
単にトレトス教と
『関連性が無いのに関連性が有るかのように
というだけさ。」
と付け加えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
三日後。
昼過ぎに、一行はエイレントの港町に
ホセとイヴァンに鳥車の番を任せ、セレス達は買い物に向かう。
目当ては主に食料だ。
「バジャルタのように活気のある町ですね。」
少しやつれたレイが言う。
この三日間のほとんどは
宿の設備も出てくる食事もあまり
「
とティナは言っていた。
「お父さんとお母さんもこんなところに
とフランも言っていた。
買い物を一通り済ませると、ミリアが
「せっかくエイレントに来たんだ。
魚料理がうまい店を知ってるんだ。」
と先に立って歩き出した。
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「コース料理を人数分
ミリアが店の席に座るなり注文すると、フランが
「私ちょっとお手洗いに…。」
と
「(さすがに
セレスが思っていると、
「私が付いて行くね。」
とティナが立ち上がり、フランと共に店の
そして、
「あら?フランは?」
ティナが
「えっ!?
セレスが声を上げて席から立ち上がる。
「個室を出たらいなかったから、先に
ティナが言い終わる前に、
ダダダ!
とセレスは店を後にする。
「
ミリア達もすぐにそれに続いた。
店を飛び出して周囲を見回したセレスの目に、
黒いマントを頭からすっぽり
群衆を
「あれだ!」
セレスは
「
「
レイとステファンが加速し、セレスのすぐ後を追う。
「
ティナが追い風でセレス、レイ、ステファンを
そして、
黒マントは倉庫街の人気の無い一画に
「近づくな!」
左手のひらをこちらに向けて、
セレス、レイ、ステファンも立ち止まる。
「(女性の声…?)」
「…こうして相対するのは初めましてかな?
ディクシフ
いや…、セレスティアーノ・トレトス・ブランパーダ。」
女性がバサリと、左手で黒マントを下ろした。
その姿にセレス、レイ、ステファンは、
ぎょっと
逆さまの
氷のような水色の
『百人切り』の異名を持つ、
ソリアード国の近衛兵長、
ベリエッタ・プラテステラの姿がそこにあった。
そして、
その
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