転生ナースの衛生革命〜スラムに追放された聖女は復讐のために生き延びることにしましたが、スラムが不潔すぎて病気も発生したのでまずは環境の改善と感染症の予防に努めます
オーギュスタは氷結の大聖女でした!乱闘が始まりました!?
オーギュスタは氷結の大聖女でした!乱闘が始まりました!?
スラムの住人と出稼ぎたちのいざこざを、元大聖女のオーギュスタが鎮めようとしている。
「人を集めるってどうするの?」
ヘレンはオーギュスタに訊ねた。
「簡単、簡単。人を多く集められる場所に案内してちょうだい」
不安なヘレンにオーギュスタはウィンクした。
「ここよ。ヴォルフさんはみんなに話したいことはここで話すわ」
「やだ!ヴォルフさんと同じことするなんて……。照れちゃう!」
「早くやって!みんなのお肉が食べられちゃう!」
「えぇっ!?ヴォルフさんのお肉が!?さっさと始めるわ!」
オーギュスタの足元に、水色の魔法陣が浮かんだ。
──寒い……。
どんどん凍える空気にヘレンは腕をさする。
「氷……?」
オーギュスタの前に氷の柱があらわれた。バキバキと音を出しながら、大木のように育っていく氷の柱。
その光景に、ヘレンは教会にいた頃を思い出した。
「かき氷の大聖女!夏にかき氷を作ってくれた大聖女はオーギュスタなのね!」
──真夏の溶けそうな日に、必ず貰えたかき氷。砂糖水をかけて食べてたなぁ。
「当たり。というかあんた達、あたしのことをかき氷の大聖女って思ってたの?」
「だって、『大聖女様からです』って食堂の人がかき氷を配ってたから……!
それにしてもすごいわ……」
目を見開いて氷の柱を見つめるヘレンに、オーギュスタは再びウィンクした。
「やっとヘレンもあたしの素晴らしさが分かったわね」
「オーギュスタさん、雑に扱ってすみませんでした」
──こんなすごい人だったなんて知らなかった。
今までの扱いを思い出したヘレンが、頭を下げる。
「なんでぇ……。せっかく呼び捨てでタメ口だったのに……あたし、ヘレンと仲良くなれたって思ったのに……」
ヘレンが慌てて顔をあげると、オーギュスタが今にも泣きそうな顔だ。
「えっと……」
「あたし、あたし……」
ポロリとオーギュスタから涙がこぼれる。
ヘレンは慌ててオーギュスタを抱きしめた。
「ご、ごめん。オーギュスタ!本当に大聖女なんだって思ったら、つい」
──忘れてた!オーギュスタはセクシーお姉さんだけど、中身が小学生女子だったわ!
「オーギュスタは私の大切な友達よ!」
「本当?」
「本当!仲良くしよう!ね?」
「そんなにヘレンが言うなら、仕方がないわね」
──めんどくさー!ご機嫌取りめんどくさー!
気を取り直したオーギュスタが氷の柱を見る。
「もっと大きい方が迫力はあるんだけど……。町にバレるとヴォルフさんが嫌がるわね」
オーギュスタが創りだした氷の柱はそこまで大きく無かった。
そもそもスラムには崩れた建物や建設途中で放り出された建物しかない。
なので大した高さではなくても氷の柱は人の目を引くのだ。
「な、なんだこりゃあ!」
予想通りの言葉を、あらわれたヤンが言ってくれた。
「なんだぁ?」
「氷?」
「でっかいなぁ」
人が増えるに連れてざわめきが大きくなる。
「スラムの人も、出稼ぎたちも驚いてる」
「このあたしの加護だもの、当然よ」
オーギュスタの真下に氷の柱があらわれた。
オーギュスタは氷の柱に立ったまま、高く上がっていく。
人々を見下ろす高さで止まると、オーギュスタは眼下に向かって話しかけた。
「みな、お聞きなさい!」
ざわめきが大きくなる。ヘレンは違和感を覚えた。
──出稼ぎの人たちは騒いでいない。
「わたくしは氷結の大聖女、オーギュスタです。訳あって教会を抜けましたが、加護はこの通り健在です」
オーギュスタは、
「わたくしはここのボスである、ヴォルフ様に救われたことがあります」
群衆が更にどよめく。しかし、出稼ぎたちは静かだ。
「わたくしは恩を忘れません。あなた方がヴォルフ様につくならば、わたくしの加護はあなた方を助けるでしょう」
あっけにとられる人々。その間をすり抜けて、一人の男がでてきた。
「大聖女オーギュスタ。いや、今は魔女のオーギュスタか。一言よろしいか?」
──出稼ぎの男。なんだろう、この人は危ない。なんだか怖い。
ヘレンは男をみて震えた。
「許します。お話しなさい」
オーギュスタの許可に、男は話しだす。
「あなたは何か勘違いしているようだ」
「どういうことですか?」
オーギュスタは静かに聞いた。いつもの態度とは大違いだ。
「我々はスラムを混乱させるためにいるのではない。それこそ、スラムの方々と協力したいとさえ思っている」
「嘘つけ!」
「じゃあなんで俺は殴られたんだよ!」
男の言葉に怒号が飛ぶ。
「それは私の監督不行き届きだ。大変申し訳ない」
「申し訳ないで済むと思ってんのか!?」
「こっちはケガしてんだぞ?働けねぇじゃねぇか!」
「お前ら黙れ!スヴァン様が謝っておられるんだ!」
スラムの住人の怒号を、男の部下がさえぎろうとする。
──あの怖い人はスヴァンと言うのね。それで今喋った人はヤンみたいな手下なのかしら?
ヘレンが手下の男を確認した時だった。
「お前が黙れよ!」
スヴァンの手下をぶん殴った。
「なんだと!?汚らしい
出稼ぎの男が、スヴァンの手下をかばうようにしてスラムの住人に手を上げる。
そこに次々と乱入するスラムの住人と出稼ぎたち。なだれるように乱闘が広がった。
「きゃ!」
ヘレンは巻き込まれないようにオーギュスタが創った氷の柱に隠れた。
──ケンカしたくない人はあっという間に避難してる……。みんな慣れたものね。
「てめえ!」
「うぐっ!やりやがったな!」
「グエッ」
「貴様ら!」
怒号と叫び声が飛び交うなか、オーギュスタが叫んだ。
「
乱闘している人々を直接凍らせる。誰もが身動きを取れなくなった。
「まったく!
オーギュスタの一言でみんな大人しくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます