付録
エレナ「さて、ハネン君。君は今日、晴れて我が研究所の一員になったわけだ」
ハネン「えっ? は、はい! あ、あれ……? 助手として保安官の事務員になったのではないんですか?」
エレナ「チッチッチッ……。ギルド保安官の助手なんて、星の数ほどいるんだよ、ハネン君? ハーズさんというギルド保安官のトップオブザトップの助手となれば、便利なマジックアイテムの開発も事務のかたわらこなしていかないと、すぐにこうなる」
ハネン「のどを親指で指して……横に一直線に……。あわわわ……。
エレナ「そうだよ。いい反応だね。では、さっそく研究の話をしよう。この檻の中にスライムがいる」
ハネン「うわ、スライム、初めて見ました。手のひらサイズで可愛いですね!」
エレナ「ハネン君! そういう甘い気持ちは今すぐ捨て去りなさい! これは魔物ですよ。触れると五分もしないうちに、手の皮がべろんべろんになりますよ」
ハネン「ええっっ! そんな狂暴な……! こんな街中のギルドハウスに置いてていいんですか⁉」
エレナ「うっ! ……まぁ、これは一応申請して届け出ているからいいんです(ウソ)」
ハネン「なるほどー」
エレナ「ハネン君、こっちを向きなさい。ゴホン……。この研究所の最終目標を説明する。このスライムを極限まで干からびさせて、魔石のエネルギーである魔力を取り出す。その魔力でマジックアイテムを造るのだ」
ハネン「素晴らしいです……! そんなこと可能なんでしょうかっ⁉」
エレナ「……これは未知への挑戦。常識にとらわれるな。それは他人の考えた結果で生きてしまっていることなのだから(by誰かの格言)」
ハネン「エレナ先輩! かっこいいです!」
エレナ「ふふふふ。じゃあ、このスライムを純粋な魔力にするため、温風でブローする。スイッチオン!」
ハネン「スライムが小さくなっていきますね。……ところで、質問してもよろしいでしょうか」
エレナ「もちろん、問いとは研究の
ハネン「どうして、エレナ先輩はマジックアイテムを造ろうと思ったのでしょうか? ハーズさんのためになるのならば、剣や防具の製造の方が楽では?」
エレナ「魔物はそこら中にいるから、それをマジックアイテムにして売りさばけば、依頼報酬とマジックアイテムの売り上げで、一石二鳥だと思ったからだよ」
ハネン「……」
エレナ「いずれは、マジックアイテムのアクセサリーショップを開いて、召使いを三人ほど雇って、特別区に家を建てて、それからそれから……ふふふふ。」
ハネン「……要はお金のためってことですね」
エレナ「!
(なんて冷たい目で見るの、この子!)
……あ、いやいや。じょ、冗談だよ! マジックアイテムをたくさん造れば、ハーズさんも助かるし、命を落とす人も少なくなると思っています(ウソ)」
ハネン「そうですよね。毎日、危険な任務にあたっているハーズさんの助手が、私腹を肥やすことなんてしないですよね」
エレナ「(グサッ!)もちろんですよ。ハーズさんの力になるために日夜研究をしているんだ。さっきのは、面と向かっていうのが恥ずかしかっただけですよ(ウソ)」
ハネン「なんだ、ちょっとからかわれただけなんですね! すみません」
エレナ「さて……。スライムも(私の気持ちも)大分、絞られたみたいだね」
ハネン「あっ、ほんとうだ。青い小さな石みたいになってますね」
エレナ「これを取り出してっと、テーブルの上にある腕輪の動力に使うんだよ。この回線にスライムの核をセットして、これをこうして……」
ハネン「反応ないみたいですね」
エレナ「まあ、そう簡単にいくのなら、苦労はないでしょ」
ハネン「これ……、ちょっと差し出がましいようですが、回路がきちんと接触していないのではないでしょうか」
エレナ「はっはっはっ! まさか! 一年近くかけて造った力作だよ。すべての回路はチェック済み……」
ハネン「ここ、ここです。おかしいと思いますが、いかがでしょうか」
エレナ「……へ?(あ、あれ? たしかに、こんな回路あったっけ?)」
ハネン「ちょっと触ってもいいですか?」
エレナ「どうぞ……」
ハネン「ここをこうして、こうすれば……つながるはず……」
エレナ「(えええーーー! すごい、この子! 細い指先が楽器を奏でるように精確かつ美しい動きで、高等テクニックをタイミングよくしかも大胆に繰り出している!)
ははーん。なるほどねぇ……」
ハネン「できましたっ! 腕輪、う、動きましたよ……!」
エレナ「(う、う……動いとる~! 奇跡や~! この子は奇跡の子や~!)
ふ……ふーん。なるほどねぇ……さすが、ハーズさんが見込んだだけあるわね」
ハネン「ありがとうございます!」
エレナ「最初の新人説明はこれで終わり。この腕輪じゃ、まだまだ実績向きにはほど遠いわ。もっとハーズさんに使ってもらえるような、マジックアイテムを造っていきましょう」
ハネン「これからもよろしくお願いします!」
エレナ「こちらこそ、よろしくね(この腕輪、いくらで売れるかな)」
異世界ギルド保安官は今日もストイックにきめる ~モテモテで最強だけど内気で臆病な保安官~ 返り桜 @kaerizakura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます