2022/12/22 第22話

(よしっ! 発見されたら即撤退!)

 おれは顔を引っ込めると、ふたたび手すりを足場に、さっきと同じ要領で屋根に飛び上がった。さすがに心臓がバクバクする。足を引っ込めた直後、下の掃き出し窓がガラリと開く音が聞こえた。

 緊張した。うまいこと女性の霊が現れたように見えればいいのだが……

 ウィッグを外し、上着を脱いで荷物を片付け、屋根から非常階段、そして廊下へと戻った。おお、室内はあったかい……とそのとき、部室のドアがバタンと物凄い勢いで開いた。

 中から飛び出してきたのは大寅間くんである。普段の落ち着いた佇まいはどこへやら、「わああぁぁぁぁ」と叫びながらバタバタと走り去って行った。その後を追いかけるように南井くんが顔を出した。

「あっ、柳さん! 大寅間くん知りませんか!?」

「あ、彼なら向こうの方に走っていきましたが……」

「ありがとうございます! おーい!」

 南井くんも同じ方向に走っていく。

 おれは部室の中を覗き込んだ。掃き出し窓を背にしている先生がまずおれを見る。春子さんが「助手さんだ~!」とおれの方にやってくる。

「え~! 顔色やばいんですけど~! 大丈夫~?」

 心配してくれる。ありがとうファルコン。顔色が悪いのは霊的な何らかではなく、寒かったのと緊張のせいです……。

 しかし、部室の中はどうも相当混乱しているらしい。大寅間くんはあの様子だし、南井くんも走り去ってしまった。青井さんは真っ青な顔で床に座り込んでしまい、洞田くんはバルコニーに出て辺りをキョロキョロしている。さすがホラー大好き男、さっき彼に見つからなくてよかった。

 おれは先生にこそっと話しかけた。

「あの、犯人? っていうかなんていうか――大寅間くんだったんすか?」

「うん……なんかそれっぽいんだけど……うん……」

 先生は釈然としない、という顔で口を尖らせていた。気になったが、これ以上ここで話をするとボロが出そうだ。とにかくその場は大興奮の洞田くんを落ち着かせたり、ガタガタ震えている青井さんを慰めたりしつつ、降霊会をきちんと終わらせて解散ということになった。それから、おれと先生は大寅間くんたちを探しに向かった。


 大寅間くんと南井くんは、一階に入っているカフェテリアの隅の席を占めていた。南井くんが大寅間くんから何か話を聞いている様子だ。おれたちが近づくと、南井くんが手を振った。

「その――大寅間が聞いてほしいことがあるそうで」

「すみません」と、大寅間くんが涙声で言って頭を下げた。「僕のせいなんです。僕が馬刷間さんを自殺に追い込んでしまったんです!」

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