2022/12/20 第20話
「いやぁ、映画部の部室で降霊会ですかぁ」
数日後に訪れた国際院振園査大学の映画部部室で、南井くんはニッコニコしていた。「いいですねぇ、ロマンがあるなぁ」
「ロマンっすよねぇ! 部長、いいこと言うなぁ!」
目をギラギラさせているのはもちろんホラー大好きな洞田くんである。青井さんはイケメンが見られれば構わないそうだし、大寅間くんも相変わらず言葉少なながら「映画作りの参考になりそうですね」などと言っていた。つまり映画部の誰ひとりとして、部室で降霊会を催すことに反対していないのである。
おれは気が重い。
「マジで降霊術とかやんの~? やばいドキドキしてきたんだけど~!」
と言いつつ話し方がふわふわしているのは春子さんだ。なんだかんだ興味があるとかで、一緒にやることになったらしい。
「部室でやって大丈夫すかね? 自殺があったのは休館の方っすけど……」
マジで幽霊を呼ぶ気らしい洞田くんは、そんなことまで気になるらしい。
「洞っちの言うことももっともだけど、あっちは今立ち入り禁止だからね。それに来美さんがよく通っていた場所の方が、もしかすると霊が現れやすいかもしれない」
「通ってた場所ってことは、つまりこの部室っすね!」
洞田くん、本当に嬉しそうだな……あと先生、当たり前のようにタメ口だし、普通にあだ名で呼ぶよな。
「ま、落下地点で降霊術とかやってたら、さすがに教務部とかに叱られるよね」
意外に――と言ったらなんだがリアリストな面を見せた青井さんが、演技っぽく肩をすくめてみせた。
すでに空は夕暮れ――を少し過ぎて青く、夜が始まりかけている。電気を消し、レースのカーテン越しの外光だけがわずかな光源となっている。基本的に部室内では火の使用が禁止されているため、蝋燭の類は使えない。
「先生~、来美っちさぁ、ほんとに来るかな~?」
「それは断言できないな~。まぁ来るといいよね~」
「だよね~、オバケもうちらの都合とか知らんよね~」
春子さんは相変わらずのふわふわっぷりだ。こんな楽しげな雰囲気で降霊会は大丈夫なんだろうか……まぁいいか。先生がいい感じに持っていくだろう。
「あ、そうだ。動画撮る?」
「お〜! いっすねー!」
「あはは、確かに撮ってた方が来美来るかもね。てか来美だったら絶対撮る」
「馬刷間さんリスペクト企画なわけですね」
「ヤラセはナシだけど。ははは」
いやなんか陽の方に盛り上がってんな。大丈夫かなほんと……。
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