第25握利 龍平くん家と一門さん家は親バカでした。

「結局さー、“米粒の一”のまま、刑事を辞めちゃったからさー、なんかー嫌なんだよねー」


 のりっぺこと、一門いちもん椿つばの父親、センター分けの少しウェーブがかったオールバックで、唇の左下に黒子ほくろがある一門典安いちもんのりやすは、子供のように口を尖らせた。


「でも、今では気に入ってんだろ?」


 立宮たてみやりゅうべえの父親、立宮たてみやきちすけは、典安を手招きしつつ尋ねた。


「まぁねー、つーちゃんがおにぎり屋さん始めたからさー、今ではとってもお気に入りだよー」


 典安はニコニコ笑いながら、レザーの幅広なつっかけサンダルを脱いだ。


(つーちゃん? ああ、椿佐だからか)


 龍平は色んなあだ名が飛び交い、混乱しそうな頭を何とか落ち着かせていた。


「君が龍平くんだねー、いやー、大きくなったねー」


「オレのこと知ってんの……っすか」


 龍平は隣に座った典安を見た。


「うんうん、吉やんと一緒にっちゃんの施設を見に行ったからねー」


「ま、勝っちゃんがいきなり『俺、刑事を辞めます! 子供たちの帰る場所を造ります!』と辞表を叩きつけた時は、驚いたけどな」


「そうそう」


「あん時の、課長の間抜けヅラ、笑えたよなー」


 吉之助と典安は思い出話に花を咲かせた。


「で? りゅうよ」


「な、何だよ」


 いきなり話を振られ、龍平は身構えた。


「典っぺんとこのつーちゃんとやらは、別嬪になってたのか?」


「え……、いやー……」


「ダメだよー、龍平くん。いくらつーちゃんが美人さんでも手を出しちゃー」


「甘いな典っぺ。つーちゃんはな龍の初恋相手なんだぞ?」


「え!? そうなのかい!?」


「あー……」


 吉之助と典安に挟まれ、龍平はタジタジだ。


「まぁねー、小さい時のつーちゃんは可愛かったからねー、惚れちゃうのもわかるなー」


 典安は親バカである。


「何を言う、小せぇ時の龍も、クソ生意気で可愛かったぞ」


 吉之助も親バカである。


「二人が一緒にいる時、微笑ましかったよなー」


「ねー」


「…………」


 二人は大親バカである。


「でも、それはそれ、これはこれ、だからねー? 護衛してくれるのは感謝するけど、初恋だとしても手を出しちゃダメ? いーい?」


「ああ……、はい……」


 龍平は苦笑しつつ、


(まだ告れてもいねーのに、手を出せるかよ……)


 と、思っていた。




−−−−−−




 あとがき。


 いつか、元刑事トリオ、揃わせたいです(笑)


 次は、おにぎり出ます! あと、椿佐も!(笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤンキーの龍平くんと元ヤンの一門さん〜恋するおにぎり食っていきねー!〜 冥沈導 @michishirube

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ