第24握利 龍平くん家と一門さん家。

「親父、鳶なんてでき……、あー最初は鳶やっていたんだったな」


 金髪坊主の立宮たてみやりゅうべえは、荷物作りを再開しつつ、話を続けた。


「そうだ。じっとしてるのは性に合わねぇからな。だが、そろそろ社長を継げと言われていたし、っちゃんとこの施設でお前を見つけたから、仕方なく社長に収まったというわけだ」


 黒のオールバックに、黒ワイシャツ黒スーツ、切れ長の目に、左に泣き黒子のある、龍平の父親、立宮たてみやきちすけは黒の革靴を脱ぎながら答えた。


「え!? 副社長と社長、本当の親子じゃないんですか!?」


 弱気でヘタレな広報担当、しおとおは、二人を交互に見ながら驚いた。


「何だ親父、言ってなかったのか?」


「何で言う必要がある」


 吉之助は龍平の後ろにどかっと胡座をかくと、淡々と続けた。


「血が繋がってなかろうが、親子は親子だ。一々言う必要ねぇだろ」


「それもそうか」


 気恥ずかしそうでもなく、当たり前のように話した吉之助を見て、遠太と龍平の親方、みち冬茂ふゆしげは思った。


(社長! かっこよくて痺れます!)


 と。


「そういえば、気になっていたんだけどよ。親父と園長ってどんな関係なんだ?」


「あん? 元同期に決まってんだろ」


「元同期って親父まさか……」


「そうだ、元刑事デカだ」


「元刑事デカー!?」


 遠太と冬茂は衝撃を受け、後退りした。


「勝っちゃん、俺、あと『握利飯』んとこの一門の父親。俺ら三人は同期だ」


「え、あいつの親父も元刑事なのか?」


 龍平もさすがに驚き、振り向いた。


「といっても、俺と勝っちゃんは捜査第一課。一門とこのは鑑識課だったけどな」


「へぇー」


「署じゃ有名だったんだぞ? “泣き落としの熊”“吉凶のたて”“米粒の一”ってな」


「泣き落としって……、ああ園長は顔が怖ぇもんな」


 龍平はゲラゲラと笑った。


「違ぇ違ぇ。勝っちゃんはな、あんなつらしてっけど、優しいんだ。で、相手のふところに入るのが上手い。だから、ホシとすぐ打ち解け、僅かな良心も見逃さない。そして、最後にはホシを泣かせ吐かせる。だから、“泣き落としの熊”だ」


「あーそっちの泣き落としな。で? 親父の“吉凶の立”は? 名前が吉之助だからか?」


「それもあるけどな。吉凶の意味、わかるか?」


「そのまんまじゃねーの? 良い悪いっつー」


「それもあるが、運や縁起の良し悪しっつー意味もある。俺は勝っちゃんと違って優しくねぇから、証拠を揃え、ホシをとことん追い詰め吐かす。俺に目をつけられたら吉と出るか凶と出るかわからねぇ。だから、“吉凶の立”だ。あと、目つきが凶暴だとも言われたな」


「親父おっかねーな」


 吉之助と龍平はゲラゲラと笑ったが、遠太と冬茂は思った。


(社長に目をつけられないようにしよう……)


 と。


「あとー……『握利飯』んとこの親父の“米粒の一”は?」


「あいつは鑑識課でよく班長していたからな。で、米粒よりも小さな形跡も見逃さなかった。だから、“米粒の一”だ」


「ダッセーあだ名」


「そうだよねー、ダサいよねー。僕もそう思うよー」


 玄関から穏やかでのんびりした声が聞こえた。

 全員が振り向くと、黒の柄シャツを着て眼鏡をかけた垂れ目の男が、スーパーのビニール袋に缶やらペットボトルの飲み物をたくさん入れ立っていた。


「お、のりっぺじゃねーか! 久しぶりだな!」


 吉之助が気さくに話しかけたのを見て、遠太と冬茂は確信した。


(出た! “米粒の一”!)


 と。


 


 −−−−−−




 あとがき。


 パパズ、揃いました(笑)


 何故、三人を元刑事にしたのかは、ただ単に、私が刑事ドラマ好きだからです(笑)


 そんな、刑事ドラマ好きの私に、次こそはおにぎりを書け! と、応援のフォローなどポチしてくださると、励みになりますー。


 あ、ちなみに、次もおにぎり出ません。多分(出ないんかい!)

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