第2章 龍平くんは一門さんを意識し出したようです。

第11握利 龍平くんはヤンキーよりヤンキーみたいです。

 翌日の十六時。


 椿つばは閉店しようと、入り口の暖簾を仕舞おうとしていた。


「何だぁ? もう閉店かよぉ」


 後ろから声をかけられ振り向くと、ガラの悪い、色違いのジャージを着た本物のヤンキーが三人いた。


「ああ、悪いね。十六時までなんだ」


「お姉さんよぉ。ファミレスとかを見習えよぉ、遅くまでやってんじゃねぇかぁ」


「そのファミレスとかに繁盛してほしいのさ、夕飯時はね。だから、ウチは十六時まで。その代わり、朝の四時からやってるからさ」


「四時って! ハハハッ! ジジイババアじゃねーんだからっ、誰も来ねえって!」


「……」


 ヤンキーたちは馬鹿にしたように笑った。


「おい」


 そのヤンキーたちの後ろから声がした。


「折角、遠出して食いに来たんだから開けろよー、腹ペコで死にそうなんだよー」


 だが、彼らには聞こえていない。


「おい」


 ヤンキーたちの後ろの声に、怒気が含まれた。


「いや、余程の事じゃないと、開けられないねー。悪いけど」


「余程の事だろぉ? 腹ペコで死にそうだって——」


「道を開けろつってんだろ!」


「ぐあっ!」


 ヤンキーのリーダーと思われる、真ん中にいた少年が後ろから背中を蹴られ、よろけた。


「何すんだてめっ、ひっ……」


 ヤンキーが振り向いた先にいたのは。


立宮たてみやじゃないか」


 現役ヤンキーより顔がいかつく、背も高い右肩に木材を担いだりゅうべえだった。


「だっ、どっ、どこの頭だぁ!?」


「ああっ!?」


「ひっ!」


「立宮、がんを付けるなよ。ビビってるじゃないか」


「ただ見ただけだろーが」


「おっ、おっ、お前はどこの頭だぁ!? 名を名乗れぇ!」


「あぁ? 立宮龍平、十九。オレは! ヤンキーじゃねぇ!」


「ヤンキーじゃない!? その顔で!?」


「はははっ」


 ヤンキーたちの後ろで聞いていた椿佐が笑った。


「どいつもこいつも顔顔うっせーな! 大体てめーら遠出とか言ってっけど、やなそうの近くの家じゃねーか」


「うぐっ……」


「それに、腹が減って死にそうだぁ!? さっきコンビニで唐揚げ食っていたろーが」


「しょ、しょ、しょしょ、証拠はあるのか!?」


 ヤンキーのリーダーと思われる少年は、震える指で龍平を指した。


「めんどくせーなー」


 龍平はズボンのポケットから黒のスマートフォンを取り出すと、とある動画を再生し、ヤンキーたちに見せた。そこには。


『あー、唐揚げ美味え!』


「それはっ!」


 コンビニエンスストアから出て、唐揚げを頬張っているヤンキーたちが映っていた。


『これから家に帰りますか?』


『すぐ近くだからまだ帰りたくねぇなぁ。そうだ! 最近『にぎめし』とかいう、元ヤンがやっているおにぎり屋が調子に乗っているらしいから、からかいに行ってやろーぜ!』


 龍平は動画を止め。


「何か文句はあっか?」


 一睨み。


「ひぃっ! す、すいませんでしたぁ!」


 ヤンキーたちはへっぴり腰で逃げていった。


「はははっ、ありがとな立宮。助かったよ」


 椿佐は安堵した様子じゃなく、いつものように笑った。


「あんな奴ら真面目に相手すんなよな。時間の無駄だ」


 龍平はスマートフォンをポケットに仕舞おうとし。

 

「おっ? あんたもそのシリーズを使ってんのかっ」


 椿佐に両手で握られた。


「なっ、何すんだ!」


「そのスマホケース!」


「あ?」


 椿佐はまえけのポケットからスマートフォンを取り出し。


「ほら!」


 裏側を見せた。そこには紅色ケースに白い筆文字のような『愛』という漢字がプリントされてあった。


「あー、スマホケースか」


 龍平は自分のスマホケースを見た。黒いケースに白で『おとこ』という漢字がプリントされてある。


「いいよなっ、このシリーズ。ケースの色も漢字もいっぱいあってっ」


「……まぁな。つーか、お前は『飯』じゃなくて『愛』にしたのかよ」


「愛を込めて握っているからねっ。ところで、今日はどうしたんだい? まだ普段なら工事現場にいる時間じゃ」


「……早退した」


「何でまた」


「……みち親方おやかたが壊しちまった椅子を直しに来た」


−−−−−−


 あとがき。


 龍平は180センチ以上あります。威圧感しかないです(笑)


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