第18話

「終わったんだなぁ……」


 地下からおそうじクラブの部屋に戻ってきたら、外はもう暗かった。

 それが本当にぜんぶの終わりみたいで、なんだかさびしくなってくる。


「そうだな。これで封印の心配もいらないな!」

「一時はどうなることかと思ったけど、解決できて良かったわ」

「うん。みんなが無事で本当に良かった」


 みんな、思い思いにつぶやいて笑顔を見せる。

 スズもまた、恥ずかしそうに頭を下げた。


「みんな……ごめんなさい。ありがとうなのだわ」

「もういいよ、大丈夫だったんだから」


 桃香ちゃんが笑ってスズの頭をなでた。なでられたスズはおとなしい。こうして見ると、本当にかわいい人形って感じだ。


 ……終わっちゃったんだ……。

 これで、幽霊はもういない。

 おそうじクラブは、もう、おしまい。

 だけど、茜くんも言っていたじゃないか。

 別れや変わっていくことはあるけど、それは全部の終わりじゃない。

 ぼくは、せいいっぱい、キレイに頭を下げた。


「みんな、ありがとう」


 あ、泣きそう。少しだけ。

 なんか、涙腺が弱くなったなぁ……。

 でも、がまんだ。

 そんな情けないとこ、見せたくない。


「……ぼく、今まで幽霊が見えるのがイヤで、一人でウジウジしてばかりだった。それが仕方ないって思ってた。でも、みんなに会えて、いろんな経験ができて……変われたことも多いと思うんだ。おそうじクラブに入れて、みんなと仲間になれて、本当に良かった。できれば……おそうじクラブが終わっても、友達でいてほしい……です」

「わかばくん……」


 みんながぼくを見ているのが、なんとなくわかる。

 ぼくはゆっくり顔を上げた。

 しみじみしちゃったけど、学校ではふつうに会えるんだし、しめっぽくなるのは良くないな。

 できるだけ笑顔で、みんなに心配かけないように……って、あれ?

 みんな、きょとんとしてるよ?


「おそうじクラブが終わるって? 何言ってんだ?」


 不思議そうに琥珀くんが首をかしげる。

 あ、あれ?

 ぼく、変なこと言ったかな?


「封印をきちんとして、幽霊も集まらなくなれば、おそうじクラブも活動しなくなるって……」


 プッ、と笑い声が聞こえた。

 見たら、茜くんが口元を押させてぷるぷるしている。

 こんな茜くん、はじめて見たぞ。


「スズもそう思っていたのだわ? ちがうのだわ?」

「そうだね。確かにあの封印のせいで幽霊が増えていたんだろうけど、元々幽霊はあれだけじゃないし……それに」


 笑いを隠せていなかった茜くんは、涙をぬぐった。

 きりっと切り替える。

 不敵な笑顔。


「仮に学校中の幽霊がいなくなったとしても、課外活動だってあるんだよ?」


 な、何だってー!?

 知っていたのか、琥珀くんや桃香ちゃんもくすくす笑っている。

 あ。藍里さんまで。

 ぐいっ。

 琥珀くんが腕を回してきた。


「そんなわけで! これからもよろしくな、若葉!」

「……まあ、ここまで来たら一蓮托生いちれんたくしょうというやつかしらね」

「わかばくん。わたしもわかばくんと会えてうれしいよ。よろしくね」

「す、スズもよろしくしてもいいのだわ!」


 ……うわぁぁぁ。

 なんだか一気に恥ずかしい!

 でも、やっぱりうれしい気持ちも強くて。

 ぼくは少しヤケになって、声を大きく張り上げた。


「天内若葉、これからもおそうじクラブの目としてがんばります!」



おしまい

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おそうじクラブはゴーストバスター? 弓葉あずさ @azusa522

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