第27話~2022年12月22日のお話(タクシー会社との面接)~

2022年12月31日更新


朝、家事を終えると早速、近所のタクシー会社に電話をした。数週間前に一度電話をしていて日勤(昼間のみの勤務)を募集しているとのことだった。


「もしもし、佐々木と申します。先日、ドライバー応募の件でお電話した者です。

まだ日勤は募集しているでしょうか」。


担当者は「日勤は人がいっぱいで空いてないんだよね~ごめんなさい」と切られた。

この数週間で状況が変化したみたいだ。


私は今年の夏に内定を頂いていた別の地元のタクシー会社を思い出し早速電話した。

人事担当の営業次長が出た。なんと私の事を覚えていた。半年くらい経っているのに。


「佐々木さんでしょ?縦浜の鶴目まで、わざわざ通って、確かご両親の実家とご自宅の間に会社があるから今後の介護の事を思って通勤されていたんだよね。覚えているよ!どうしたの?」。


私は、現在無職で仕事がなくて困っている胸の内を明かした。


「そうなんだ。確か奥さんとお子さんもいたよね。男だったらここから頑張って稼がないといけないよね。普通二種免許もあるし、確か乗務員としての登録も残っているよね?うちで良かったらまたおいでよ。一度採用になっているんだから。今日この後、履歴書を持って来れる?本当は昼間勤務の募集はしていないんだけど、何とか調整するようにするよ」。

この営業次長さんは、面接の時の第一印象で感じのよい方だなと思っていた。

11時30分に電話を切って、その2時間後の13:30に面接をしてくれる事になった。


面接の応接室。営業次長とは夏以来お目にかかった。そうそう、この優しそうな感じだ。お久しぶりでございますと両者同時に言った。


席に座り履歴書を渡した。営業次長の顔が曇った。

「あれ?うちの内定を断って、てっきり別の老舗タクシー会社で今もバリバリやっていると思ったんだけど、研修中に辞めたんだ。何か理由があったの?」と痛い所を突かれた。


先輩による同乗者研修中に、ドアをぶつけたり、安全確認ができていないなど色々ひどく怒られて、その先輩が怖くなって逃げましたなんて、まさか言えない。その先輩からはタクシードライバーは向いていないとまで言われていた。


「研修中に辞めた理由は、会社には申し訳なかったのですけれど、その間、タクシーを今後つづけるべきか悩んでしまいまして、やっぱり英語を使用した貿易事務に戻りたいと考え、転職活動をしようと思って辞めました」と歯切れの悪い言い訳をした。


営業次長がタクシーの心構えを話し始めた。

「たかがタクシーだけど、されどタクシーなのよ。旦那がタクシーをやっていると奥さんは今日も安全に帰ってくるかしらと不安になると思うけどね。自分の気持ちが大切なのよ。

自分は絶対事故をしない、大丈夫だと思って運転する事が大切。不安に思っていながら運転するとフラフラしてしまうから余計に危ない。頑張って自分のお客さんを作ることも大事だね。そうして頑張っていると運がついてくるから」。


話が長いな~と思って聞いていたが、この人好きだな~と思った。親身になって話してくれる。お父さんという雰囲気を持った、温かい人だ。多分、従業員の事を家族だと思って接しているのだろうなと思った。


「本題に入るけど、やっぱり配車担当とも話したけど、日勤者が増えるとその分、夜はその車が稼働できない状態になってしまうから、夜の勤務をしてくれた方が会社的にはありがたいんだよね。最初は昼勤務でやって、近い将来、隔日勤務(一日20時間勤務)で働いてくれると約束してくれるなら採用するんだけどね」と言われた。


「ちょっと考えさせてください」と言った。


「こちらも少し考えるからまた連絡するね」と言われてタクシー会社を後にした。


やっぱり、隔日勤務は嫌だ。拘束時間も20時間くらいになり、疲れるから運転にも支障が出て危なくなる。暗くて狭い道を行かされ事故の確率も上がるし、酔っ払いの相手をする確率も上がるし、夜は標識も見えづらくなり違反する可能性も上がる。確かに昼勤務より稼げる事は知っているのだが。心は煮え切らない。あと、深夜勤務は医者からも止められている。規則正しい生活が必要なのだ。


少し考えたが、やっぱり昼間勤務を募集している会社を探そう。

手あたり次第、電話をかけたが、全て駄目だった。

5件目でやっと日勤募集をしている会社を見つけた。

明後日の土曜日に面接をしてくれる事になった。

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