第12話 ~海外営業職編(12月3,4日の話)~

2022年12月11日の更新 


週末土曜日。今日は子供たちの習い事のスケジュールがびっしりだ。妻はお友達と遊びに出かけ夜まで帰ってこない。私一人で子供たちの習い事に付き添う。朝から洗濯、お風呂掃除、お茶碗洗い、部屋の整理、トイレ掃除を片付け、午前10時過ぎに家を出て午前11時~始まる長男の体操クラブがある。1時間。その後は車で移動して13時~次男の幼児教室がある。これも1時間。また移動して次は14時30分から長男のピアノ教室だ。これは30分。

今日は朝から精神不安定だった。子供の習い事は毎週毎週ルーティンワークなので何の問題もない。子供たちが習い事をやっている間はボーっと待っていればいいだけだ。寝ててもいい。海外営業職の仕事のストレス、会社の事がずっと頭から抜けない。今日は朝の家事が終わった後に精神安定剤のジアゼパムを2錠飲んでいた。本当は1錠という処方だが、それだと効かないと思った。薬の影響なのか、長男が体操クラブをやっている間、体調が悪くなり(気持ち悪くなった)、車の中で寝ていた。

次男の幼児教室の前の駐車場に車を停めた。降りた後に鍵を閉めようとしたら、いつもとは違う音が鳴り、鍵が閉まらない。何度やっても閉まらないので、だんだんとイライラしてきた。よく見ると次男を助手席に座らせていた事を思い出した。次男が半ドアのまま外に降りたのだ。助手席のドアを見ると、案の定開いていた。イラついて、車の中に置いてあったプラスチックの買い物用のかごを蹴り飛ばした。そしてリスペリドンとジアゼパム錠を飲んだ。会社の事がまた蘇った。どんな仕事の引き継ぎが待っているのか。どんな人が教えるのか。月曜日から業務がOJTで本格的に始まる。早くも会社のストレスが休みを侵食し始めた。

今日は一日精神的にひどかった。何をしてもむかつく。子供たちの騒がしい声。社内で子供たちが食べるハンバーガーの匂い。頭にきて道路に落ちていた空き缶を蹴飛ばした。知らないおじさんがそれを見ていたが、私は全く気にならなかった。

鬱が進行しているのが分かった。体が会社に対して拒否反応を示している。

習い事が終わり家に帰っても子供たちはうるさい。子供たちのパワーは凄い。一日全く衰えない。次男は少し荒れてきている。戦いごっこが好きなので私に向かってよくお相撲の張り手やつっぱりをしてくる。それが偶然、私の顔に当たった。むかついて、反射的に次男の頭をげんこつで思い切り叩いてしまった。早くも生活に支障がきたしている。

両親からは、「会社を続けていくのは無理だね。採用が決まった頃から不安な気持ちが始まったかもね。だとすると、とても無理です。子供に与えてしまった心の傷がとても心配です。涙が出る思いだよ。信一は心から子供たちに謝らないといけない。就労支援センターには相談したの?私たちもずっと心がザワザワしている。何よりも心の病気を治すことだね」と言われた。

12月4日日曜日。今日は一日何も考えないように家でゆっくりしようと思った。いつもなら長男のそろばんは私が付き添いに行くのだが、それを止めて、妻に行ってもらった。全ては明日、会社に行くために。疲れを溜めないために。明日会社に行くのは義務だ。妻や両親、私の弟への義務を果たすためだ。そして仕事内容が合っていないと分かったら辞めようと思った。その判断をするために明日は必ず行かないといけない。

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