第10話 ~海外営業職の入社日12月1日の話~

2022年12月8日の更新 


とうとう初日を迎えた。一日目はオリエンテーションのみだった。実際業務を行う職場では行われず、別の会議室で一日行われた。一日、色々な部署の人が業務内容を教えに講師として来て説明をしてくれた。社内ルールが細かくて覚える事がたくさんあって、どんどんストレスが溜まっていく。最後の講師は海外営業の直属の上司の課長。その人から現在の海外営業の販売状況だとか、競合他社の状況、経営課題、売り上げ戦略の方針、今後のマーケティングの戦略だとか、売り上げ目標の説明をされ、途中から話についていけなくなり、話が頭に入ってこなくなった。気分が悪くなり、慌てて頓服薬を飲んだ。みんなエリートで話も早口で、話を真剣に聞いてついていかなくてはならないプレッシャーを感じて一日で疲れてしまった。この会社では無理だと早くも思ってしまい、重い気持になってしまった。一日でこんな気分になるなんて、やっぱり自分は病気だと感じた。社旗復帰するための会社、職種としてはハードルが高すぎると感じた。いつもならかばってくれる両親に今日の事を話すと電話口で熱くなっている。「とにかく、新しい仕事を始めたら、どんな仕事だって努力しなければついていけないのは当たりまえだ。あなたの弟二人だって、いとこだってみんなそうやって頑張っている。今だって努力しているんだよ。とにかく逃げないで。まだ仕事をやっていないんだからね。とにかく頑張って明日は会社に行くと約束をして」と言われた。私も熱くなって「両親の二人にはこれからは金銭的援助をしてもらわなくていいから。アルバイトでもなんでも掛け持ちしてやって、そっちに迷惑さえかけなければ、どんな仕事をしようが構わないだろう?こっちこっちで何とかするから、放っておいてくれ」と言い、電話を切った。

友人からは、「無理して社会復帰するよりも、病気をちゃんと治して自分のペースで社会に貢献していけるほうが良いと思いますよ」と言われた。「そうは言ってもね~。生活が困窮してきているから病気が治るのを待っていられないのよ」と言うと、友人は「そーですか。頑張ってください。適当に仕事していればいいんですよ」といつもの楽観的なアドバイスをもらった。友人のように脳天気に行きたいと思った。妻は私に何を言われても受け止められないし、何か私にとって意にそぐわない事を言えば私が怒り出すので何も言わず一人部屋で息をひそめていた。友人に言った。「とにかく今日は大量に精神安定剤と睡眠薬を飲んで早く寝ます。明日の朝起きて、まだ行けるようだったら会社に行きます」と告げて、ビールを一気飲みした後、ラツーダとクロチアゼパムとデエビゴとエバミールを飲み、脳を強制終了させた。

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