第29話⁂トム王子とオードリ姫の再開⁂




 

 いつ終わるとも知れない戦いは延々と続き、長丁場になるかと思われたが、なんと魔女ダイアナ妃が、津波の威力で衰退していたにも拘らず、なんと……あの特殊な人魚の毒ピンク色の泡を、うっかり口にしてしまい倒れ込んでしまった。

  

 妖怪の、ろくろ首や口裂け女たちが必死に声を掛けるが、ビクリともしない。

 魔女ダイアナ妃は亡くなってしまったのだろうか………?


 

 ◆▽◆

 トム王子は、ダイアナ妃が居なくなった事で束の間の休息に浸っている。

 それでも思い出されるオードリ姫の事。


 あの魔女ダイアナ妃が言っていたオードリ姫が、余命いくばくも無いという言葉にショックで言葉にならないが……その反面……まだ生きていてくれた事に喜びで一杯だ。


(急に海のほとりに現れなくなった理由が、まさか結婚だったとは?僕はてっきり「余命いくばくも無いと、お医者様から言われている」と嘆いていたから、亡くなったものとばかり思ってショックで打ちひしがれていたが、例え人妻になっていたとしても、生きていてくれただけでも幸せだ。そして……あの魔女ダイアナ妃が言っていた「オードリ姫は、この星フラワーフェアリー星の地上を一つに束ねている、凄腕のケビン王のお妃様なのだ。だが……もう余命いくばくも無いと、私の透視では出て居る」と魔女ダイアナ妃が言っていたので、オードリ妃が死ぬ前に一目会いたい!そして……そして……例え人妻でも良い……もし……僕の事を本当は愛していたがやむを得ない理由から、ケビン王と結婚したという事も、十分考えられる。だって……?結婚式を間近かに控えて、僕とあんなに毎日会ってくれていたなんて……絶対に、好意が無かったら出来ない事だ。気持ちに整理を付ける為にも、聞けなかった言葉「僕の事をどう思っていたの?」と聞いてみたい)


 そこで……地上に上がってオードリ姫のお城に、忍び込んでみた。


 海底生物を自由自在に操ることが出来るトム王子なのだが、実は…更に……自由自在に変身する事も出来る。



 そこで……トム王子は、近衛兵に変身して、このフラワーフェアリー星を束ねている陸の王様、ケビン王のお城に忍び込んだ。

【近衛兵(このえへい):君主を護衛する。広義には大統領などを警護する役割の兵や部隊もこう呼ぶ】


 近衛兵に変身したトム王子は、君主やその一族を護衛する立場なので、当然オードリ姫にも接触可能だ。


 ダイアナ妃からオードリ妃が余命いくばくも無いと聞いて、居ても立っても居られなくなったトム王子は、必死になり「オードリ妃」に接触を試みた。

そして…やっとの事接触に成功。


 だが、やっと会えた喜びで胸が一杯なのだが……容態が思った以上に深刻で、ショックの余り涙が溢れ出て止まらない。


 やはり……かなり衰弱しきっている様子で、オードリ妃はベッドに横たわり、いつ命が尽きるとも知れない状態でやっとの事、会うことが出来たのだった。



 それでも…トム王子は、何故急に僕の目の前から居なくなったのか?何故一言結婚するのだったら、正直に話せなかったのか?オードリ妃に、何故急にいなくなったのか?その理由を聞き出したいばかり。


(あれだけ毎日のように森の中を探索し、いろんな話もした仲なのに、何故急に僕の目の前から居なくなったのか?そして……本当は、この僕の事をどう思っていたのか?本心を聞き出したい。そして……もし……この僕の事を少しでも意識していたのであれば、今からでも決して遅くはない!)そう思うトム王子だった。


 オードリ妃に護衛兵に変身しているが、実はトム王子である事を隠して、徐々に徐々にオードリ妃の心の中を探ってみた。


(あいにくオードリ妃は、数ある近衛兵の中でも取り分け僕をひいきにして、爺やや、婆やがいながら僕に何かと声を掛けてくれている。きっと何か……以心伝心伝わるものが有るに違いない?)こうしてオードリ妃の本心を聞き出した。



「オードリ妃は、結婚前、海のほとりのお城に住んでいらっしゃいましたが、何故家族でお住いの立派なウィンデー城がお有りなのに、わざわざあんな辺鄙な海辺のほとりのお城で静養なされていたのですか?」


「フフフ!それはね、ある日どこの国の王子か分からないが?いろんな話をしてくれる王子に出会ったのよ……だから……そのトム王子と話している時だけが、イヤな事全部忘れることが出来たのよ。それで療養がてら海辺のお城で静養したってワケ!」


「じゃ~その、トム王子に恋をしていたって事ですか?」


「イヤ~?それは違う。私はケビン王を心底愛していたから……あくまでも……トム王子はお友達で……それ以上でも……それ以下でもないわ」

 本心を聞いたトム王子の顔は、見る見るうちに引きつり暗い表情になった。


「エエエエエエ————ッ?」


 今まで十年間思い続けていたのに……余りにもあっけない言葉に……拍子抜けしたと言うか何というか?…まさか……こんな言葉が返ってこようとは想像もしていなかった。てっきり男として意識していたから、毎日会ってくれていたものとばかり思っていたのだった。


 (ましてや結婚間近かだと言うのに、僕と会っているという事はよっぽど夫になる人に、不満が有ったに違いない。もし今でもそうであれば死に逝く短い時間だけでも愛を全うしたい)誰でも結局は自分に都合よく考えてしまうもの。そんな期待感で一杯だったのだが、事実は全く違っていた。


(よくもまあいけしゃあしゃあと「私はケビン王を心底愛していたから」だと~!)思い続けていた自分自身が惨めで、バカに思えて開いた口が塞がらない。そんな思いだ。


 こうして余りの思い違いに、ショックを通り越して呆れ果てて、海底都市に帰って行ったトム王子。


 ◆▽◆

 海底都市の過去を振り返ってみたが、あれからアダム王子と、スプリング姫と、メアリー姫に、何か進展は見られたのか?

 


 アクア王国の妃で、ダイアナ妃の御子息がアダム王子で、地上のフラワーフェアリー星の三番目の姫スプリング姫がひょんな事からアダム王子と知り合い、アダム王子に淡い恋心を抱いている。

 当然アダム王子もスプリング姫にぞっこんなのだが………?


 一方のトム王子の兄でネバーランド王国のブラッド王のお姫様が、メアリ-姫なのだが、アダム王子といいなずけ契約が結ばれていた。この三角関係はどうなるのか?


 アダム王子と、スプリング姫と、メアリ姫の恋模様はどうなるのだろうか? 







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