第28話⁂最終決戦⁈⁂



 コテンパンに反逆された鬼たちは、とうとう耐え切れなくなり鬼の住み家に帰って行ってしまった。


「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と唱え、悪魔を呼び出した魔女だったが、ここはジャパンなので悪魔は鬼。

【西洋の悪魔と日本の妖怪は「妖怪の中に『鬼』も含まれている」同じようなもの】


 後に残された魔女とトム王子の戦いとなってしまった。

 トム王子と魔女が凄い目付きで睨み合っている。


「お前は、何故私の命を狙おうとするのだ!理由を言って貰おうではないか?」

 まずトム王子が口火を切った。


「ワッハッハッハ~!ワッハッハッハ~!あれほど言ったではないか?『午前零時を回ったらこの城に近付くな!』と、何故言う事を聞けなかったのだ?言うてみい!」


「それはだな……可笑しいだろう?何故愛し合っているのに……いつも一緒に居られないんだ?……その理由がどうしても……知りたくなった……それでは聞くが……オードリ姫に化けていたのはお前か?……それから……どうしてお前が……この城に住み着いているんだよ……その理由を聞かせてクレ!」


「そうだ!私がオードリ姫に化けていた。それから……まだ私の正体が分かっていないようだな?私は……私は……ダイアナ妃だ。どうして城に住み着いているかって、ワッハッハッハ~!……それは……あんな……貧乏国アクア王国とマリン王国では生きて行くのが大変だから、お前たち兄弟を色仕掛けで攻めまくって……ウッフッフッフ~!この海底都市一豊かなネバーランド王国の領土を……少しだけ……頂きたかったからだ。折角ブラッド王と仲良くなったのに邪魔をしおって……計画が丸つぶれだ!」


「何だと———ッ!男の気持ちを踏みにじる汚いやり方で、兄と俺の心をボロボロに傷つけやがって———ッ!許せない!クッソ-殺してクレルワ———ッ!」


「こっちこそだ。折角上手く行っていたのに邪魔しやがって————————ッ!」


 巨大なほうきに乗って海底を傍若無人に飛び回る魔女ダイアナ妃。

 そして…魔女ダイアナ妃は紫に光るほうきの先から、巨大な矛を一瞬で取り出した。

「トム王子許せぬ!この矛で一突きにしてくれるわ!」


トム王子も負けてはいない。

ぶら下げていた剣で魔女ダイアナ妃にかかって行った。


「パシン!」


「ガシャン!」


「ドカン!」


「シャリン!」

 両者一歩も譲らない戦い。


 こうなったら仕方がない。

 その時魔女ダイアナ妃が「エイ!」と呪文を唱えると丸い水晶玉が、魔女ダイアナ妃の目の前に現れた。


「オオオ オオオオオオ 見えるぞ!フッフッフ!ハッハッハッハ!呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う、邪魔なトム王子を、ワッハッハッハ!今度こそは呪い殺してクレルワ—————ッ!」

 すると…その青く澄み切った水晶玉の中の水が泡となり、ゆったりと優美に上って行ったかと思いきや…その海底を連想させてくれる何とも幻想的で美しい水晶玉が、やがて…見る見る異様な泡を噴き出し、真っ黒になって爆発した。


「お前の、これが未来だ!爆発して木っ端みじんにしてクレルワ—————ッ!」


 すると…トム王子の身体が見る見る焼けただれて”ビリビリ” ”ビリビリ”砕け始めた。

「ウックク クルシイ!嗚呼……ああああああ……クク クルシイ!」


 トム王子は、苦しくて言葉にできない程衰弱しきっているが、それでも必死で「アブラカタブラ」と呪文を唱えた。


「アブラカタブラ」は死の呪文としても有名で、一瞬で命を奪うことが出来る恐ろしい呪文。

 すると……海水の水が恐ろしいまでに勢い付き波打ち、未だかってこの海底都市で鳴り響いた事の無い酷いごう音が鳴り響いた。


「ゴゴゴゴゴゴ————————ッ❕ブッキュッグルグルグルグルドッカン!バッカーンプッシュギュルギュルドッカ————ン!」


 それは……巨大津波だった。


 天が荒れ狂い、稲光が傍若無人に天空を突き刺し、雷が海をこれでもかとヤリの様に突き刺し、不気味な紫の空が一瞬でどす黒い黒褐の暗闇に覆われ、荒れ狂い地獄と化した。


 海水が、まるで地獄の様に荒れ狂い波打ち、魔女ダイアナ妃も一気にその津波に飲み込まれて、一瞬で消えてしまった。



 もう津波にさらわれ、とっくに息絶えたかと思われた魔女だったが、何か……海底の奥底から性懲りもなく……あの魔女ダイアナ妃が呪文を唱えた。


「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と、唱え悪魔を呼び出した。



 すると…江戸時代の日本髪を結った青白い幽霊女姿の、首が抜けた長~いろくろ首が、長い舌を出し何体も現れ、牙をむき出し血を吸おうとトム王子に向かって来た。


 すると…更に巨大化した丸坊主で男のろくろ首だが、顔や首中うろこで覆われ鋭い目付きと、にょっきり出た鋭い牙に、長~い舌をべろんべろんしながら獲物を食い殺そうと現れた。その迫力はまさに鬼以上、そんな男のろくろ首が何十体も現れた。

【日本国なので悪魔ではなく妖怪】

 

 更には…恐ろしい顔の、目は吊り上がり虚ろな目をした口裂け女や、ギラギラ鋭い目をした口裂け女が現れた。口から真っ赤な血を滴らせながら、何とも不気味な妖怪だ。


 片手にツゲのクシを持っている女も居れば、長い剣や、出刃包丁、カマ、ナタ、斧、メスなど複数の刃物を持っている口裂け女も現れた。殺傷力の高い凶器を好むらしいが、至る所に刃物を忍ばせ、この海水を埋め尽くさんとばかりに、多くの口裂け女だ現れた。

 中には一瞬で巨大化する口裂け女もいるが、更には…巨大な群れを成し、走るのが異様に早くハヤテの様に一瞬で現れた。

 

 そのいで立ちたるや恐ろしくて、一目見たら発狂しそうなくらいだ。


「何だ~?あの化け物は……これは大変だ」

 海の生き物を自由自在に操るトム王子は、最大のピンチに立たされた。 


 今度は、トム王子が”ピ-ピ-”と指笛を鳴らすと、妖精や人魚更には…巨大なサメにシャチなどの魚たちが、群れを成しどこからともなく現れた。



 首が抜けた長~いろくろ首が…サメやシャチと言った巨大魚にも臆する事無く、突進して、長い首でグルグルに巻き付け絞め殺している。


 男のろくろ首は、一見すると竜の胴体のようにも見えるが、あの巨大なアナコンダと変わらぬ迫力ある姿で、頭はまるでコブが出来たようにいびつに膨れ上がり、恐ろしい牙で巨大魚に果敢に噛みつき、グルグルに巻き付けて、次から次へと殺している


 サメやシャチも負けてはいない鋭い牙で果敢に、襲い食い殺している。

 だが、妖怪なので又息を吹き返し現れる。


 水の妖精たちも、魔法の粉を散りばめていたずら心で何やら……試している。


 水の妖精たちの、この美しい天の川銀河のような、星屑を散りばめたような魔法の粉は、キラキラ輝き✨✨見る者を魅了するが、実は……。


 一瞬で氷の塊で覆われ、どんな巨大な怪獣であろうが、妖怪であろうが氷に覆われたらそれを破壊する事など出来ない恐ろしい粉。


 美しい妖精たちはその姿形から、金の粉を振りまいて妖怪たちを魅了して油断させているが、これがとんでもない話。

「ハ~イ!」と言って妖怪たちに綺麗な金粉のような粉をまき散らしていく。すると……一人また一人と氷の膜に覆われ、やがてカチンカチンになり身動きが取れなくなって行く。


 また……人魚たちは海底の奥底に住む、神と慕われている魔女ガガお婆さんの元に向かい、このネバーランド王国を脅かす妖怪たちを殺す毒を口に注入して貰っている。

 こうして人魚たちは妖怪にだけ効果のある毒を吹き付けている。

 人魚たちが口から綺麗なピンク色の泡を、妖怪たちに吹き付けると妖怪は次々に倒れて行った。


 一方の口裂け女も色んな刃物を自由自在に操り、次から次へ巨大魚をズタズタに切り裂いている。

 

 こうしていつ終わるとも知れない戦いは延々と続き、長丁場になるかと思われたが、なんと魔女ダイアナ妃が、津波の威力で衰退していたにも拘らず、なんと……あの特殊な人魚の毒を、うっかり口にしてしまい倒れ込んでしまった。

  

 妖怪の、ろくろ首や口裂け女たちが必死に声を掛けるが、ビクリともしない。

 魔女ダイアナ妃は亡くなってしまったのだろうか………。


 魔女ダイアナ妃が倒れ込んだ事によって妖怪たちは、いつの間にか消え去ってしまった。それは……至極当然の事。

 戦闘の指揮者で大将が倒れた事によって、一気に意欲が低下して逃げ帰ってしまった。



















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