第18話『問い詰める』

「レイ、どういうつもりだ、」


 リビングに先生の鋭い声が響いた。


 レイとセナ、シノと先生がダイニングテーブルを囲み、リビングには重たい空気が流れている。その他の人間は思い思いの場所で、ダイニングテーブルのやり取りを眺めている。


「政府相手に単騎突撃とは、よくやるもんだ」


 レイから伝えられた事実に、シノも笑うしかない。王が変わったのは風の噂程度に入ってきていたが、能力者狩りについて聞くのは初めてだった。


「なんで分かったんだ?能力者狩りのこと」


 街に出る先生やシノにも入ってきていない情報を、何故レイが掴んでいたのか。


「……時をいじったんだ」


 レイは、俯きながらそう答えた。


「僕の能力は、……時間操作。指を鳴らして時を止めたり、進めたり戻したりすることが出来る。未来を見たんだ。ここに政府の軍が突撃してくる未来。どうにかして止めたかった。だから、人数を減らしていけばと思って、」


 レイは嘘をついた。

 政府が攻めてくる未来なんて見ていない。


 1回目、それで大切な人たちを失った。2周目のこの世界でも、同じことが起きると踏んだ。現に、今のところは1周目と同じように進んでいる。


 今のところは、だが。



「…力持ちになっていたのね、」


 隣のシノがため息と共に吐き出した声を聞きながら、イオリは白衣の裏の注射器をなぞっていた。1つの能力に対して、ブースト剤は1本。今のところ、1人1つの能力しか持てないから、1人1本ずつのカラフルなブースト剤が白衣の裏にぶら下がる。


 薄赤がヒイロ、薄青がナギ、薄桃がサク、薄緑がリツ、薄鼠がセナ、薄橙がカエデ、透明に近い白がレイ。


 本来7本のはずのブースト剤は、8本ぶら下がる。レイの分が2本。



 つまり、時間操作以外のもう1つの能力を保持している可能性がある、ということ。

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