第9話『ニシノクニノハナシ』

 この地域の西部にあるとある国で、国王と従者が話をしていた。国王は大広間で床から数段上のところに作られた豪華な王座に座り、従者はその下に跪く。


「誰もが暮らしやすい国を作ろう。国民、皆平等で差別が生まれないような、そんな国をつくろう」


 国王は従者にそういった。はい、と並んだ従者の頭が肯定のほうに揺れる。


「国王、一つ質問をしてもよろしいでしょうか」

「なんだ」

「私は、国民間の少しの差が差別のきっかけになると考えました。どのような対策をとられるのでしょうか」


 国王はこの従者の考えに同感した。ふむ、としばらく黙ると


「同じ仕事に同じ賃金、同じ家に同じ食事、同じ衣服で統一しよう」


と答えた。



 先程と別の従者が手を上げる。


「歯向かう者にはどうしましょうか?」

「見せしめの処刑だ」


 あと、と国王は言葉を続ける。


「俺は(普通)から、大多数が持つ正解から、外れた奴が嫌いだ」


 じっとこちらを見続ける従者たちに、国王は話が理解出来ていないと判断し。おいお前、と一人の従者を指名した。指名された従者の返事の声は震え、よろよろと立ち上がる。


「お前が思う(人間の定義)とは何だ。どの条件がそろっていれば、お前は人間と判断する?」

「頭、首、胴体、腕が2本、足が2本あり足で立っている者、でしょうか」

「魔法等ほかの力はどうだ、使えるのか」

「ほとんどの人間は使えません」

「お前の意見をまとめると(人間の大多数の正解)は頭、首、胴体、腕が2本、足が2本あり足で立っている者でかつ魔法等ほかの力は使用できない。そういうことだな」

「はい」


 作られた回答にほかの従者からの異論は出なかった。もっとも、国王に反論できないというのもあるだろうが。


「話を戻すが、(人間の大多数の正解)から外れたやつも処刑の対象とする」


 以上、と国王は話を結んだ。

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