第7話『シサクヒン』

 個人の情報を遺伝子レベルで書き換え、能力を付与する。


 シノの能力は今となっては安定してきたものの、不安定時に能力を付与された者がいた事もまた事実である。彼は能力が安定していないことから、能力付与を断わっていたが、上からの圧力は彼の首を縦に振らせることしか出来なかった。


 この塔の地下に住まう彼らは、不安定時のシノに能力付与を行われた者である。

 そして自らのことを(試作品)と呼ぶ。卑下しているのか、むしろ誇りに思ってか、その本心は本人たちにしかわからない。



 1日2回までの複製能力。

 手が届く範囲の重力操作。

 雨の日は効かない透視。

 体力のない式神使い。

 距離の制限がある瞬間移動。

 範囲の制限がある時間操作。



 能力持ちだ、と言い切るにはどこか足りない自身の力達。

 それでも使いこなし、塔の守り人を務める。



 塔から離れないのは、シノを恨んでいないから。

 世界を変えられても、彼の力になりたいから。

(完成品)になれる彼らを守るため。


 また、ほかの役割を与えられているからである。



 ナビゲーター。



 いつの日か役割を全うするその日まで、彼らは地下室でその時を待つ。


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