それぞれの、愛 隣人の愛を知れ 尾形真理子 幻冬舎文庫
『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』から7年ぶりの2作目。
期待していなかった日常を変えた、出会いと別れの物語。
人生でいちばん好きな人となら、幸せになれますか?
不倫と仕事に一生懸命なパラリーガル、初恋の相手の同棲を続けるスタイリスト、夫の朝帰りに悩む結婚3年目の妻……。誰かを大切に想うほど淋しさが募る日常は、予想外の"事件"をきっかけに一変する。
自分で選んだはずの関係に、どこで決着をつけるのか?
素直になる勇気を得て、新しい人生を踏み出す6人の軌跡を描いた恋愛小説。
Amazon商品ページより
6人の女達の視点で綴られる物語。
不倫中のパラリーガルの知歌、夫が浮気しているひかり、子ども食堂の職員で何年も夫と別居している美智子、その子ども食堂にやってくる小学生の莉里、映画監督の夫を持つ女優の青子、青子のスタイリストのヨウ。
そっけないほどの文で綴られるそれぞれの自分語り。
彼女達の関係は徐々にしか見えてこない。けれど読み進むうち、彼女達と関わる男達を通して、彼女達が繋がっていく。
サラリとしたドライな文体で、ある種突き放すような書き方ですらある。
けれど彼女達がそれぞれに痛いほどに愛を求めていることが伝わってくる。
コンプレックスや女としての意地、ふとした時に顔を出す自分の中の卑屈さや幼稚さ。自身のエゴイスティックさを自覚しながらも、男を繋ぎ止めるために言い訳をせずにいられない弱さ。そうしたものがまざまざとつきつけられる。
男達の弱さや狡さに振り回されながら、それでも彼らからの愛を求める彼女達。
自分の愛しているものは全て虚構かもしれない、掴んだと思ったものは指の間をすり抜けて、手を開いたら何も残っていないんじゃないか。そうした不安を持ちながら、彼女達はやがて自分の本当に望むものと向き合っていく。
彼女達は傷つきながらも愛を手に入れるのだ。
愛されることを望むのではなく、自分が愛すると決めることで。
男達を巡る愛を描きながら、ここで描かれるのはもっと様々な形の愛っだった。
親と子、姉妹、友人。それぞれが只中にいる葛藤を知ることで、それぞれの愛を知るのだ。
愛されることを手放すことで、愛することを手に入れる。
その強さを手に入れて生きていく彼女達は、傷だらけで美しいのだ。
好きだと思える自分になればいい。自分で好きだと思えないのに、隣にいる人には愛してもらおうなんて矛盾している。相手の愛情に不安になる前に、わたしが信じられるわたしでいること。それでも裏切られるなら、自分の愛に悔いはない。
本文より引用
この本はぜひなるべくネタバレせずに読んでいただきたい物語です。
ですので登場人物1人1人について細かく書くとどうしてもネタバレしてしまうので、ちょっとあっさりした感想になってしまいました💦
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