第4話 ケイの通院
ケイの食べる量は、身体のわりに少ないと思い、動物病院の先生――和泉先生に相談したけど、問題ないと言われている。
「この子の血液検査の結果ですけど、正常な値がひとつもないの。でもおかしな様子もないし、元気だし……定期的に通ってもらえますか?」
こんなことを言われた時はビビったけど、月に一度の通院で和泉先生に会うことをケイは楽しんでいるようだ。
診察室――この動物病院で一番広い診察室に、ケイは大きな身体を縮こませて入って、和泉先生が来てくれると身体を揺すって喜んでいる。
和泉先生は女性で、旦那さんと一緒にこの動物病院を経営している。
保護した時、近所のここに連れてきてからの付き合いだ。
この病院の人たちは、ケイのことを「注射も怖がらないし、検温も検査もおとなしくさせてくれる賢いワンコちゃんね!」と褒めてくれて、かわいがってくれるから、こんな優しい先生や看護師の人たちがいる病院が家の近所でよかったと思っている。
「体温が五十五℃……高いけど、いつもこれくらいの体温なのよねぇ……この子はこれが普通なのかなぁ? 山田さん」
「はい?」
「ケイちゃんのこと、大学に相談してもいいですか? わたしの先生にいろいろと報告して、アドバイスもらおうと思うんだけど……」
俺はケイの首をなで、ニコニコで和泉先生と俺を交互に見るケイに萌えつつ答える。
「病気じゃないことを確かめたいんで、お願いします。長生きしてもらいたいから」
「ありがとう。じゃ、少し血をもらうね? ケイちゃん、血を少し分けてね? ケイちゃんのこと、もっと詳しく調べて、ご主人と安心して暮らせるようにお手伝いしたいの。いぃい?」
和泉先生にほっぺを撫でられながら言われたケイは、ニコニコで応える。
「ワン……クゥ」
「ありがとう! ケイちゃん、言葉がわかるのかしらねぇ?」
和泉先生が、ニコニコでケイのほっぺをモフって首をかしげた。
俺は得意げに答える。
「言葉がわかってるんじゃないかって思うこと、けっこうあるんですよ」
「賢いワンコちゃんねぇ。ケイちゃんは! うんちは健康ですか?」
「はい。来た頃は下痢気味でしたけど、今はもうちゃんと固形です」
ちゃんと固形って、おかしな表現だ……。
「うんちの量は?」
「いつもどおりですね。身体のわりに食べないし、出さないし……なんでもなければいいんですけど」
本当に、なんでもないことを祈ってる。
そんなことを思いながら、ケイの頭を撫でると、耳を倒してニコニコで応えてくれた。
かわいぬぅ!
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